BABYMETALの魅力を構成する10のワード

 BABYMETALの結成10周年を記念して10月13日に発売される予定の『別冊カドカワ 総力特集 BABYMETAL』。本誌には「あなたが思う『BABYMETALの魅力を構成する10のワード』」という企画があり,Webで回答を募集していたので投稿した。サイトでは全体を総括する形で150文字以内の理由説明を求められたものの,とてもじゃないがそれだけでは説明し尽くせない。そこで,それぞれのワードについて簡単に解説してみた。ちなみに「ワード」が「単語」のことなのか「語句」のことなのか不明だったので,わかりやすさを考慮してある程度の文字数になる語句とした。

1.SU-METALの歌声

神バンドが奏でる轟音に埋没することなく,真っ直ぐに天高く突き抜ける圧倒的なSU-METALの歌声は,どこまでも伸びやか。彼女の歌声がなければBABYMETALが存在し得ないであろうことは,KOBAMETALがBABYMETALというプロジェクトを思いついたきっかけとして「中元すず香の歌声」を挙げていることからも明らかだ。

2.表現力に秀でたダンス

初期の頃は「メタルとダンスの融合」というコンセプトの斬新さが注目された。曲に合わせて踊ることが困難であることは誰の目にも(耳にも)明らかなヘヴィ・メタルという音楽に,見事なまでにマッチさせた振り付けを産み出したMIKIKO-METALの功績は甚大。3人の一糸乱れぬシンクロ感と,指先からつま先まで配慮が行き届いた洗練されたダンスは,BABYMETALの楽曲が持つ世界観を雄弁に表現していると思う。美しさ,力強さ,切れ味など,あらゆる点で隙がない。

3.神バンドのスキル

BABYMETALが世界中のヘヴィ・メタル好きから支持され,筋金入りのミュージシャンからも評価されている理由の一つには,間違いなく神バンドの存在があると思う。人間が演奏することは不可能なのではないかとすら感じさせる難曲の数々を完璧に演奏することが神バンドの最低条件。そこまでのスキルを持つミュージシャンは多くはない。また,神バンドによって奏でられる音が,同じステージに立つBABYMETALの各人に及ぼす心理的効果も実は大きい。

4.メタルの過去と未来を融合した楽曲

ヘヴィ・メタルの古典へのオマージュをふんだんに盛り込みながら,ポップスやEDM,ラップから果ては民族音楽まであらゆるジャンルの要素を積極的に取り入れた楽曲群は超個性的。メンバーが常々口にする「BABYMETALというジャンルを創りたい」という思いは,アルバムを発表するごとに着実に前進していると思う。手を出す領域が広がりすぎているようでありながら,それでいてどの曲もBABYMETAL流のメタルであることは驚異的ですらある。

5.メタル・エンターテインメント

BABYMETALのライブは会場の規模やライブのコンセプトにより様々な演出が施される。特にアリーナ級の会場では大掛かりなセットが組まれることが多く,豪華な照明と巨大スクリーンを使った演出には圧倒的なゴージャス感がある。一方でリチュアルな儀式を模した演劇やミュージカルのようなストーリー性のある演出が成される公演もあり,それはもはや一大メタル・エンターテインメントと言うべき強烈な魅力を有する。

6.独自の虚構世界

BABYMETALに数々のお告げを下すという「キツネ様」という存在がその象徴。メタルの復権を目指す「メタルレジスタンス」や,初期~中期のライブでほぼ毎回登場した「紙芝居」で描かれる独特の世界観(言ってしまえば「設定」)は,BABYMETALが有するコミカルな魅力をよく体現している。真面目に考えればバカバカしいが,それを遊び心として捉えて楽しめるかどうかで,BABYMETALに対する評価は激変する。

7.物語性

メタルのメの字も知らなかった1人の中学生と2人の小学生(しかも女子)が,BABYMETALの活動を通じてメタルを理解し,メタルを自分のうちに取り込んでいくというリアルな成長物語は,間違いなくBABYMETALの魅力の一つ。初期からの多くのファンは,BABYMETALの音楽とライブを楽しみながら,思春期の少女たちが素敵な大人の女性へと成長していく様を見守り続けてきたと言ってよい。また,YUIMETAL脱退後の「アベンジャーズ・システム」で選ばれた3人のサポート・ダンサーはSU-METALやMOAMETALとは遠からぬ縁があり,そこにもある種の物語性が感じられる。

8.逆境

BABYMETALは逆境でこそ真価を発揮する。SU-METALやMOAMETALもしばしば言っているが,BABYMETALは何かと試練にさらされる。完全アウェイ,尋常ならざる暑さ,YUIMETALの不在――その多くはライブにまつわるものだが,それ以外にも初期の頃には「アイドルかメタルか」で論争が巻き起こったり,2018年の「ダークサイド」というコンセプトが批判されたりしてきた。ハードルを超えたら,またハードル。壁を乗り越えたと思ったら,更に大きな壁が出現。それでも,「逆境だと,むしろ燃える」という挑戦者魂を失わないのがBABYMETALなのだ。

9.全力でやりきる姿勢

結成初期の頃はメンバーが幼かったこともあり,60分のライブが終わる頃にはガス欠になり,足元がフラフラになるシーンが多く見られた。いわば命がけの全力ライブ。そのようなひたむきさもまた,BABYMETALの魅力だ。さすがに最近ではフラフラの状態でライブを終えることはなくなったが,何事にも全力で挑戦する姿勢,中途半端ではなく振り切って取り組む姿勢は健在だ。それはプロ意識の高さの現れだと言ってもいいだろう。

10.道なき道

BABYMETALという存在は唯一無二。彼女たちが表現する音楽やライブは,彼女たちにしか成し得ない極めてユニークなものだ。「道なき道を突き進む」という孤独な戦いは,多くの困難に見舞われる。しかしそのような崇高な精神に多くのファンが共感し,孤高の道を歩むBABYMETALを全身全霊で応援しているのだ。それこそが「We are The One」の精神だと言えよう。


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