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BABYMETALというジャンルを体現した新曲“Light and Darkness”

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Light and Darkness / BABYMETAL 2023年2月24日配信 新アルバム「 THE OTHER ONE 」から“ Light and Darkness ”が先行シングル第4弾として配信開始された。 メタラーとしての個人的な感想を述べると,この曲は少なくとも私の感覚ではヘヴィ・メタルではない。音作りのベースはたしかにメタルっぽいが,全体的にダンサンブルでエレクトロニカルなイメージが強く,EDMっぽい要素も垣間見られるからだ(メタル成分を極限まで削ぎ落としたAMARANTHEとでも言おうか)。しかも明るく開放的なヴォーカル・メロディは90年代のJ-POPのようなテイストを感じさせるので,メタルとの距離は広がる一方だ。 それでは,この曲はいったい何なのか。 “ Light and Darkness ”の最大の特徴は,SU-METALの歌声を大々的にフィーチャーしている点にあると思う。 かつてここまでSU-METALのヴォーカルを全面的に押し出した曲があっただろうか,というのが率直な感想だ。今までの数々の楽曲においても,もちろんSU-METALの歌声は圧倒的な存在感を放っていた。メタルの轟音に埋もれることなく,天まで突き抜けるようなその伸びやかな歌声は,さながら深い闇を切り裂く一条の光。そのようなBABYMETALの顔であるSU-METALの歌声とヴォーカル・パフォーマンスの魅力を最大限に活かそうと意図して作られた曲。それが“ Light and Darkness ”なのだと思う。 楽曲のためのヴォーカルではなく,ヴォーカルのための楽曲――そう感じさせる“ Light and Darkness ”は,J-POP的なメロディを美しくパワフルに歌い上げるSU-METALの歌唱をとことん堪能すべきヘヴィ・ポップスあるいはメタル・ポップスなのだ。 かつてSU-METALは「BABYMETALというジャンルを作りたい」と言っていたが,もしかしたら“ Light and Darkness ”はその足がかりになる曲なのではないだろうか。もともとBABYMETALはメタルを軸に様々なジャンルの音楽の要素を巧みに取り込んで個性的な音楽世界を構築してきたが,“メタルでありながら,メタルではない”と感じさせる“ Light and Darkness ”は,そ

ライブ参戦レポ/「BABYMETAL RETURNS - THE OTHER ONE -」過去最高レベルにシアトリカルで「なんじゃこりゃ」な2日間

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 2021年3月〜4月に行われた日本武道館での10公演を最後にライブ活動を休止していたBABYMETAL。それから約2年。ついにBABYMETALが"封印”を解き,音楽シーンに戻ってきた。2023年1月28日・29日に幕張メッセで行われたBABYMETALの復活ライブは,奇しくもその前日に「収容人員の規模によらず大声OK」と政府が発表したことにより,マスクの着用が義務付けられた点を除けば,ほぼコロナ前と同等のレギュレーションで開催されるライブとなった。みんなで大合唱,随所で発生するモッシュにサークル,"イジメ、ダメ、ゼッタイ”でのWall Of Death……ああ,BABYMETALのライブが帰ってきたんだなあ――心の底からそう感じるライブだった。 幸運なことに,私はこの記念すべきライブに2日とも参戦することができた。1日目は「南・Hブロック」の360番台,2日目は「北・Dブロック」の170番台だった。詳しくは以下のレポートで述べるが,会場を縦断する移動式ステージを両サイドから眺めることができたので,これもまたラッキーだったと言える。 以下は1日目の参戦記をベースに,2日目の所感を適宜加味したレポートである。 ■総論 オープニングの度肝を抜く荘厳な演出と時空を超えた「なんじゃこりゃ」のミクスチャー。右に左に振れ幅がとんでもなく広い,いかにもBABYMETALらしいライブだった。新曲を5曲も組み込んだ大胆なセット・リストはBABYMETALなりの未来への決意表明にほかならない。一方で同じく5曲が1stアルバムからチョイスされており,2ndアルバムからは1曲,3rdアルバムからは2曲というセレクトだ。最も古いアルバムとライブ開催時には未発売の最新アルバムから最多かつ同数の選曲というのは,今回のライブの性格を象徴しているとも言える。自身のルーツを振り返りつつ,これからの未来へとしっかりと目を向ける――今までのBABYMETALとこれからのBABYMETALの狭間にあるのが,この日のBABYMETALだったのだと思う。 未来志向という点では,革新的なステージ・セットが強いインパクトを放っていた。“封印前”最後のライブとなった日本武道館10公演を踏襲した全方位正面システムが採用されたほか,ステージは可動式で常に会場中央を端から端まで行ったり来たり。