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レビュー/日本とタイの豪華コラボが実現!F.HERO x BODYSLAM x BABYMETALの“LEAVE IT ALL BEHIND”は超ストレートな応援ソング

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LEAVE IT ALL BEHIND / F.HERO x BODYSLAM x BABYMETAL 2024年3月14日配信開始 日本のBABYMETALとタイのF.HERO,BODYSLAMがコラボして,ほぼ何の前触れもなく“ LEAVE IT ALL BEHIND ”と題した曲を2024年3月14日に配信開始し,同時にMVも公開した。 写真=BABYMETALの公式Xより ◯日泰合作 男声グロウル(F.HERO),男声クリーン(BODYSLAM),女声クリーン(BABYMETAL)というトリプル・ヴォーカルはまるでAMARANTHEのよう。三者三様の歌声が代わる代わる登場するので,ドマラティックなミュージカルと観ているうような気分になるのも同様だ。MVの映像もクールで,暗雲立ち込める世紀末的な雰囲気とポジティブな歌詞のコンストラストが印象的。 ◯単純に曲がかっこいい シンプルでストレートな曲調ながらメロディアスで,特にサビのメロディが強く印象に残る。最近のBABYMETALはラウド系に寄せた轟音&重低音の楽曲が多いので,柔らかさを感じさせる“ LEAVE IT ALL BEHIND ”のタッチはBABYMETALにしては珍しいと思う。音の情報密度が過剰ではなく,適度な隙間があるような感じとでも言おうか。それでいてしっかりとメタルっぽさを感じさせるサウンドだ。 また,MVを観るとこの曲の魅力がいっそう際立つと思う。CG合成の背景がとてもダークなので,SU-METALの真っ直ぐな歌声の「暗闇に射す一条の光」的なイメージが強まっている。3組のアーティストのコラボではあるが,結果としてSU-METALの美しくも芯の通った歌声が大々的にフィーチャーされることになっている。 ◯ポジティブな歌詞が良い BABYMETALの楽曲の歌詞はシュールすぎたり,ぶっ飛んでいて意味不明だったり(特に初期),あるいはメッセージ性は強いものの大仰すぎたりして,良くも悪くもサウンド同様にリミッターが右に左に大きく振り切れているものが多い。ある意味現実感が乏しいというか。それに比べて“ LEAVE IT ALL BEHIND ”の歌詞は等身大。具体的で身近に感じられるメッセージ性に満ちており,高みから発せられるのではなく地に足がついているという感じがする。聴いていて非常に共感できる

ライブ参戦レポ/「BABYMETAL WORLD TOUR 2023-2024 LEGEND - MM 20 NIGHT & 21 NIGHT」

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 【総評】 いかにもBABYMETALらしい,驚きと楽しさにあふれた2日間だった。「LEGEND - MM」という名にふさわしい,MOMOMETALを大フィーチャーした演出。久しくライブでは封印されていた楽曲に再びスポットライトを当てた選曲。BABYMETALのライブに多くのファンが「こうあってほしい」と願うことに対して,満額回答以上の出血大サービスで応えてみせるのがBABYMETALである。 2日間のライブのハイライトは,間違いなく1日目の“ヘドバンギャー!!”と2日目の“META!メタ太郎”だろう。かつてこれほとまてにファンの度肝を抜き,それと同時にファンを笑顔にさせる出来事(パフォーマンス)があっただろうか。 1日目。”ヘドバンギャー!!”でMOMOMETALを単身で天井からステージに降ろすなどと,いったい誰が予想しただろうか。しかもデス・ヴォイスまで織り交ぜるとは。SU-METALからマイク・スタンドを受け取り,ものすごい目力で虚空を見据えるMOMOMETAL。片手で神々しくマイク・スタンドを高々と掲げ,間奏が終わると同時に「あたま,あたま,あたまー!」と強烈なグロウルが炸裂。あまりの出来事に呆然としていたら,凶暴なグロウルとは真逆のアイドル・ヴォイスで「はったちっのっ よっるを〜」とスタッカートを効かせて歌い出すという暴挙(?)に。この切り替えはBABYMETAL史上最大級の「なんじゃこりゃ」だったと思う。ギャップ萌え,ここに極まれり。私の周辺では面白すぎて大笑いする人もおり,大騒ぎだった。 そして2日目。MOMOMETALをフィーチャーした“META!メタ太郎”が演じられ,この時にもMOMOMETALのデス・ヴォイスが炸裂した。中間部の「ぶっ飛ばせメタ太郎!」で何の前触れもなく突然のグロウル。まさかこの曲でもデス・ヴォイスを用いるとは。完全に予想外である。この曲がライブで披露されること自体久しぶりであり,それだけでもファンを狂喜乱舞させるほどなのに,その「主役」がMOMOMETALでしかもデスボ付きという超弩級のサプライズ。誰もがこの事態に心の底からびっくりしつつ,その予想外の演出を笑顔で楽しんだに違いない。 ステージと観客席の双方から発せられる熱量が凄まじかったのだろう。ライブ本編とは関係ないが,2日目に目撃した出来事が面白かった。Happy

祝☆リリース10周年/BABYMETALの記念すべき1stアルバム「BABYMETAL」に宿る不変の精神

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 2月26日はBABYMETALの記念すべき1stアルバム「 BABYMETAL 」がリリースされた日。リリースされたのは2014年なので,今年は10周年記念である。 初回限定盤はジャケットのデザインが異なる BABYMETALは現時点で5枚のスタジオ・アルバムをリリースしている。ただし2020年発売の「 10 BABYMETAL YEARS 」はベスト盤であり,2023年の「 THE OTHER ONE 」は外伝的作品と位置づけられていることから,“正統派”のアルバムは「 BABYMETAL 」(2014年),「 METAL RESISTANCE 」(2016年),「 METAL GALAXY 」(2019年)の3枚ということになる。 2ndアルバム「 METAL RESISTANCE 」はメタルというジャンルを縦に深掘りした作品で,メタルに真正面から向き合った名盤だ。3rdアルバム「 METAL GALAXY 」(2019年)はメタルのサブ・ジャンルを水平方向へと幅広く切り開いており,音楽的多様性が際立つボリューミーな作品である。いずれもBABYMETALの成長と進化を如実に物語るアルバムだが,1stアルバム「 BABYMETAL 」こそがBABYMETALの音楽性のコアであり,BABYMETALの何たるかを最も強烈に体現したアルバムであることに異論はないだろう。収録されている全13曲のうち半数近い6曲(“BABYMETAL DEATH”,“メギツネ”,“ギミチョコ!!”,“ヘドバンギャー!!”,“イジメ、ダメ、ゼッタイ”)が,10年経った今でもライブに欠かせない定番曲であることはその証左だと言える(ちなみにファンの間で最も人気が高い曲である“紅月-アカツキ-”もこのアルバムに収録されている)。 「 BABYMETAL 」には古典的なヘヴィ・メタルへのオマージュがふんだんに散りばめられており,曲調も正統派メロディック・スピード・メタルからゴリゴリの重低音が轟くブルータルなメタル,ゴシックテイストあふれる曲まで“何でもあり”の状態で,実にバラエティに富んでいる。BABYMETALの代名詞である“なんじゃこりゃ”感が最も強烈なのが,このアルバムだと言えよう。メンバーの成長とともに楽曲やアルバムのイメージも大人になっていくが,「メタルを軸にした多様性」あるいは「あれも

レビュー/BRING ME THE HORIZON “Kingslayer” ft. BABYMETAL (LIVE IN TOKYO)ーあの「完全版」がついに映像化!

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 相思相愛のBRING ME THE HORIZONとBABYMETALが初コラボした“Kingslayer”。ファン待望の“リアル・コラボレーション”が2023年3月の「NEX_FEST」で実現したわけだが,その模様をふんだんにフィーチャーしたMVがBMTHのYouTubeチャンネルでついに公開された(2023年12月13日)。 ライブで「完全版」を目の当たりにした際には音源とは異なりエフェクトがかかっていないSU-METALの歌声に感嘆したが,あいにくステージまでの距離が遠かったのでBABYMETALの3人がどのようなダンス・パフォーマンスを披露しているのかは判然としなかった。このたびのMVにより,ようやくその全貌が明らかになったわけだが……。 こごまで自由に荒ぶるBABYMETALを見たのは初めてだ。自分たちの曲ではなく,あくまでもBMTHの曲だからだろうか。今まで見たことがないような笑顔にあふれ,かなりリラックスした様子がうかがえた。基本的には振り付けがあるものの,その所作には自身の曲を演じる時のようなシンクロ感は感じられず,良い意味でルーズなようにも見えた。観客の煽り方にしてもごくごく自然で,しかも心の底から楽しそう。 ダンスそのものも普段のBABYMETALのライブではお目にかかれないような力強さに満ちており,繊細さや洗練さとは対極にあるように感じた。そもそもBMTHの曲なのだからダンスのテイストがBABYMETALの楽曲のそれとは異なるのは当然なのだろうが,それにしても比較的シンプルで力強い路線に寄せたこの振り付けを、いったい誰が考えたのかが気になるところ。ベースになるアイデアはSU-METAL,MOAMETAL,MOMOMETALの3人が出したのではないかという気がしないでもない。 何から何まで初めてづくしのこの日の“奇跡”。個人的なハイライトはオリヴァーとSU-METAL,MOAMETAL,MOMOMETALの4人がステージ中央で豪快にヘドバンをかますシーンである。今までは兄が妹を導くようにBMTHがBABYMETALを引っ張ってきたイメージがあるが,このシーンを見て,兄の背を追い続けてきた妹たちがようやく兄に追いつき,文字通り同じステージに立ったのだという感じがした。アーティストとしての格はもちろんBMTHの方が数段上だ。しかしその

ライブ参戦レポ/「NEX_FEST」で“Kingslayer”完全版をついに目撃

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 2023年11月3日に幕張で開催されたフェス「NEX_FEST」で,BRING ME THE HORIZONとBABYMETALの夢のコラボレーションがついに実現した。BABYMETALをフィーチャーしたBMTHの楽曲“ Kingslayer feat. BABYMETAL ”で,満を持してBABYMETALがBMTHのステージに登場したのである。 BMTHがこの曲をライブで披露する時,BABYMETALパートは基本的に音源使用だった。いわば「音源のBABYMETAL」との共演をせざるを得なかったわけである。それは当然と言えば当然のことなのだが,ファンの心理としては「早く両者の共演が見たい!」というひと言に尽きる。その「ファン待望の瞬間」が,ついにと言うべきかようやくと言うべきか,幕張の地で現実のものとなったわけである。 以下は,そのパフォーマンスをステージのはるか遠くから体験した際の感想である。 ◆“ Kingslayer feat. BABYMETAL ” Bring Me The HorizonがBABYMETALをフィーチャーした“Kingslayer”の「完全版」をついに目撃することができた。相思相愛の両者がついにステージで夢の共演を実現。ファンにとってこれほど嬉しいことはない。 ステージは遠かったものの,サウンド的には申し分なし(フェスのトリを務めるBMTHのステージなのだから当然だ)。何より普段よりも自由な感じでパフォーマンスするBABYMETALの3人が魅力的だった。綺麗な長髪をなびかせて華麗かつクールにヘドバンをかます場面ではBMTHのオリヴァーも同じステージに上がり,4人でヘドバンするという何ともエモい光景が繰り広げられた。 ちょっと驚いたのはSU-METALのヴォーカルだ。音源では声にエフェクトがかけられており,そのせいか機械的な歌声のピッチはかなり高かった。一方,この日のライブではもちろん完全に生歌。それにもかかわらず,SU-METALは何ら不自然さを感じさせることなく超高音パートも見事に歌い切っていた。お見事としか言いようがない。 さらに3人のダンスにしても,自分たちの曲ではないにもかかわらず「BABYMETALクオリティ」をきちんと維持していたのはさすが。全編で歌うわけではないので,SU-METALのダンスをいつもよりたっぷりと

ライブ参戦レポ/「NEX_FEST」に降臨!フェス仕様のBABYMETALは超攻撃的だった

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 BRING ME THE HORIZONがキュレートするフェス「NEX_FEST」が2023年11月3日,幕張で開催された。BABYMETALは国内外で様々なフェスに出場しているが,私がフェスでのBABYMETALを目撃したのは今回が初めて。本来ならば2020年3月の「KNOTFEST JAPAN」でフェスでのBABYMETALを初体験できるはずだったのだが,ご存知のように新型コロナのせいでフェスが延期されてしまったので,「フェスでのBABYMETALを見てみたい」という私の願いは叶えられなかった。このたび3年越しでその夢がようやく現実になったわけである。しかもBMTHとのコラボという最高のおまけが付いた状態で。 初めて見た「フェス仕様のBABYMETAL」は,ただただ凄かった。いや正しくは「フェス仕様のSU-METALは」と言うべきか。ここまでアグレッシブに観客を煽りまくるBABYMETAL/SU-METALは見たことがない。これはもう完全に予想外だった。ついでに言えば,ここまで日本語で煽りまくるSU-METALを見たのはメイト歴9年にして初めてかもしれない。良い意味で「行儀の悪いBABYMETAL」という感じで,単独ライブでのBABYMETALは「猫をかぶった状態」あるいは「よそ行きの姿」なのではないかとすら思えた。もちろん,どちらも正しくBABYMETALそのものてはあるのだが。 以下はフェスで披露された楽曲についての感想である。 01.BABYMETAL DEATH ライブのオープニングでこの曲を見るのは何年ぶりだろう。“In The Name Of…”も“FUTURE METAL”もオープニングを飾るに申し分ない曲だが,やはりBMDが一番しっくりくる。なによりのっけからオーディエンスを興奮のるつぼに叩き落とすことができる点が素晴らしい。 02.ギミチョコ!! この曲が始まるや否や周囲の人たちから大きな歓声が沸き起こった。フェスだからこの日がBABYMETAL初体験という人も多かったはずだが,曲のさわりをどこかしらで耳にしたことがある人は多かったのだろう。この曲がBABYMETALの代名詞であることを再確認した次第。 03. PA PA YA!! SU-METALがやや歌舞伎気味だったことが印象の残っている。「祭りだ!祭りだ!」の巻き舌がいつになく

レビュー/「BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE - BLACK NIGHT & CLEAR NIGHT」 新生BABYMETALが生まれた記念すべき夜

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BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE - BLACK NIGHT & CLEAR NIGHT / BABYMETAL 2023年10月11日発売(THE ONE 限定盤) THE ONE 限定盤のパッケージ 2023年4月1日と2日に横浜の「ぴあアリーナMM」で行われたBABYMETALのライブを余すところなく収録した映像作品である。私が購入したのは「THE ONE 限定盤」で,両公演のBlu-ray2枚に加えて音源を収録したライブCD4枚,112ページのライブ写真集がバンドルされたスペシャルBOX仕様だ。 YUIMETALの脱退とその後の「ダークサイド」や「アベンジャーズ」時代(SU-METALとMOAMETALの2人でBABYMETALの歩みを何とかして維持していた時期)をリアルタイムで目の当たりにし,BABYMETALのこれまでの物語を知る古くからのファンには,それら全ての「今までの苦労」が一掃される壮大なカタルシスをもたらす感動的なライブだったはずだ。そのハイライトが,MOMOMETALが正式にBABYMETALの3人目のメンバーになったことの発表であり,セット・リストから長らく外されてきた“BABYMETAL DEATH”の復活である。 BABYMETALのことをそこまでは知らないライトなファンや新規層にとっては,そのようなBABYMETALの物語性を抜きにしても,ひとつのライブとしての完成度の高さがよく分かる最上級のエンターテインメントだったに違いない。 上品で豪華,それでいて嫌味がない。これはもう,メタル・エンターテインメントとして極上の魅力を備えたひとつの芸術である。 両面ジャケット仕様 こちらはBLACK NIGHT CLEAR NIGHTのジャケット 112ページのライブ写真集 ○映像とライティングが素晴らしい ステージ後方の背後に大きく映し出されるスタイリッシュな映像と,豪華だが派手すぎず上品なライティングが強く印象に残る。ライブ会場でも感じたことではあるが,こうして映像を見るとその素晴らしさに改めて気づかされる。 いわゆる「西の神」によるパワフルで迫力満点の演奏,SU-METALの孤高の歌声,MOAMETALとMOMOMETALの表現力豊かで切れ味鋭い美しいダンスーーパフォーマンス自体のクオリティ