レビュー/「BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE - BLACK NIGHT & CLEAR NIGHT」 新生BABYMETALが生まれた記念すべき夜

BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE - BLACK NIGHT & CLEAR NIGHT / BABYMETAL
2023年10月11日発売(THE ONE 限定盤)

THE ONE 限定盤のパッケージ

2023年4月1日と2日に横浜の「ぴあアリーナMM」で行われたBABYMETALのライブを余すところなく収録した映像作品である。私が購入したのは「THE ONE 限定盤」で,両公演のBlu-ray2枚に加えて音源を収録したライブCD4枚,112ページのライブ写真集がバンドルされたスペシャルBOX仕様だ。

YUIMETALの脱退とその後の「ダークサイド」や「アベンジャーズ」時代(SU-METALとMOAMETALの2人でBABYMETALの歩みを何とかして維持していた時期)をリアルタイムで目の当たりにし,BABYMETALのこれまでの物語を知る古くからのファンには,それら全ての「今までの苦労」が一掃される壮大なカタルシスをもたらす感動的なライブだったはずだ。そのハイライトが,MOMOMETALが正式にBABYMETALの3人目のメンバーになったことの発表であり,セット・リストから長らく外されてきた“BABYMETAL DEATH”の復活である。

BABYMETALのことをそこまでは知らないライトなファンや新規層にとっては,そのようなBABYMETALの物語性を抜きにしても,ひとつのライブとしての完成度の高さがよく分かる最上級のエンターテインメントだったに違いない。

上品で豪華,それでいて嫌味がない。これはもう,メタル・エンターテインメントとして極上の魅力を備えたひとつの芸術である。

両面ジャケット仕様 こちらはBLACK NIGHT

CLEAR NIGHTのジャケット

112ページのライブ写真集

○映像とライティングが素晴らしい

ステージ後方の背後に大きく映し出されるスタイリッシュな映像と,豪華だが派手すぎず上品なライティングが強く印象に残る。ライブ会場でも感じたことではあるが,こうして映像を見るとその素晴らしさに改めて気づかされる。

いわゆる「西の神」によるパワフルで迫力満点の演奏,SU-METALの孤高の歌声,MOAMETALとMOMOMETALの表現力豊かで切れ味鋭い美しいダンスーーパフォーマンス自体のクオリティが絶品であることは言うまでもない。その素晴らしいパフォーマンスをさらに引き立てているのが,豪華で上品な映像とライティングによる演出だ。

○最新アルバム収録曲のインパクトが絶大

2日間のライブでは新アルバム「THE OTHER ONE」に収録されている10曲全てが披露されたが,その10曲のインパクトがとにかく大きい。ライブで目の当たりにする方が,アルバムで聴くよりも曲の魅力が数段高まっている印象だ。

このライブでの新曲の感想を手短に述べると以下のようになる(アルバム収録順)。
  • METAL KINGDOM……凶々しい巨大な玉座に3人そろって座している様子が最高にかっこいい(同年1月の公演では2人しかいなかった)。
  • Divine Attack - 神撃 -……その名の通り神々しい。コール&レスポンスでSU-METALがステージ前方に立って両手を広げ,歓声を全身で浴びる姿が印象的。
  • Mirror Mirror……強烈な緩急と人間離れしたドラミングがすごい(西の神万歳!)。
  • MAYA……重量感と硬質感が尋常ではなく,アルバムで聴くよりもはるかにブルータル。
  • Time Wave……メタルとは距離感がある曲調と,その曲調にマッチしたダンスがクール。
  • Believing……プログレ的なギター・ワークがかっこいい。
  • METALIZM……何から何まで超個性的。
  • Monochrome ……ライブで化けた。ヘヴィネスとグルーヴ感がハンパない。
  • Light and Darkness……曲調がエモくてダンスがオシャレ。
  • THE LEGEND……ドラマティックな展開が魅力。シンクロするSU-METALとMOAMETALのダンスにも注目。

○「CLEAR NIGHT」でのMOMOMETALとMOAMETAL

2日目の「CLEAR NIGHT」ではMOMOMETALを大写しにするショットが明らかに増えたと思う。1日目「BLACK NIGHT」の最後でMOMOMETALが正式に“召喚”されたことを受けてのことであろう。サポート・ダンサーとして2人体制のBABYMETALを支え続けてきたMOMOMETALだが,その役割ゆえ映像作品では主役として扱われることはなかった。「CLEAR NIGHT」を迎えて,MOMOMETALはようやく表舞台に立つことができたのだ。彼女の柔らかな笑顔が強く印象に残る。

終盤で披露された“THE ONE”で,MOAMETALが泣いているように見えたのは気のせいだろうか。大きな目が潤んでいて,いまにも大粒の涙がこぼれ落ちそうに見えた瞬間があった。BABYMETALとファンの絆を歌ったこの曲はBABYMETALにとって極めて大きな意味を持つ。YUIMETAL脱退後の試行錯誤と苦難の時期を経て,そのような大切な曲を再び“最強の3人”がそろった状態でファンと共有できるようになったことを喜ぶ涙。私にはそのように見えた。

○復活した“BABYMETAL DEATH”

先にも述べたが,この公演のハイライトの一つは,“BABYMETAL DEATH”が披露されたことだと思う。BMDはBABYMETALの最初期から存在する曲で,ライブではオープニングを飾ることが多かった定番曲である。歌詞はないに等しく,各メンバーの名前とグループ名をひたすら連呼する型破りな構成で,いわば自己紹介のような風変わりな曲でありながら,クールで印象的なブレイク・ダウンがあり,オーディエンスとメンバーが一体になって叫ぶことのできる,ライブでは長らく欠かせない曲だった。

ところが,YUIMETALが脱退したことでBMDは成立しなくなり,2017年12月に広島で開催されたライブ「LEGEND - S - BAPTISM XX -」を最後にBMDは封印され,ライブのセット・リストにその名を連ねることはなくなってしまっていた(ちなみにこの公演はYUIMETALが体調不良で不在だったので,オリジナルの3人によりBMDが披露されたのは同年10月に大阪で行われた「巨大キツネ祭り in JAPAN」が最後である。この公演はYUIMETALがファンの前でパフォーマンスした最後の公演でもある)。

2023年4月2日,そんな“BABYMETAL DEATH”が3人体制のBABYMETALの復活とともに,およそ5年ぶりに披露されたのだ。ファンにとってこれほど嬉しいことはない。アンダーグラウンド臭が強烈なこの曲を,今や押しも押されぬ世界基準のビッグ・ネームに成長したBABYMETALがプレイすることのギャップが感慨深い。オーディエンスを煽りまくる3人の姿,西の神が繰り出す轟音がもたらすアジテーション,これこそが“BABYMETAL DEATH”であり,これこそがBABYMETALである。様々な想いが込められたこの日のBMDは,実に強烈なインパクトを放っていた。

【収録曲】
BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE - BLACK NIGHT
01 THE LEGEND
02 メギツネ
03 ギミチョコ!!
04 MAYA
05 Mirror Mirror
06 Time Wave
07 KARATE
08 Believing
09 METALIZM
10 Distortion
11 PA PA YA!!
12 Road of Resistance
13 BABYMETAL DEATH - Shin ver. -
14 イジメ、ダメ、ゼッタイ

BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE - CLEAR NIGHT
01 METAL KINGDOM
02 Road of Resistance
03 いいね!
04 PA PA YA!!
05 Mirror Mirror
06 Light and Darkness
07 KARATE
08 Monochrome
09 METALIZM
10 Distortion
11 Divine Attack - 神撃 -
12 THE ONE
13 BABYMETAL DEATH
14 イジメ、ダメ、ゼッタイ


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