考察|BABYMETALの3人目問題/なぜ鞘師里保と藤平華乃の名は明かされたのか

2018年の〈ダークサイド〉を経て本来の姿で再起動した感があるBABYMETAL。6月の横浜アリーナ2公演を皮切りに,イギリス,名古屋と続いた計6回の公演では,3人のサポートダンサーの存在が大いに注目された。まるで2019年になって初めて3人体制に戻ったかのような騒ぎになっているが,実はBABYMETALは2018年12月の時点ですでに3人体制に戻っている。オーストラリアの『GOOD THINGS FESTIVAL」出場時と,シンガポールでのJUDAS PRIESTのサポート公演がそれだ。

その時のサポートダンサーは平井沙耶だった。だがBABYMETAL本体はもちろん,実はどのメディアも「3人目」が平井沙耶だとは報じていない(そもそも,この時の4公演をレビューしている媒体がほぼ皆無)。各媒体に掲載された多数の写真やファンカム動画などから「平井沙耶」だと認定されたにすぎないというのが実態なのだ。

Photo: RNA Showgrounds

Photo: W1snu.com

その点,今回の「3人目問題」は明らかに状況が異なる。サポートダンサーが誰であるかをBABYMETAL自身が明確に説明していない点は昨年12月と同じ。しかしメディアは,横浜1日目とイギリスでは鞘師里保,横浜2日目では藤平華乃がサポートダンサーを務めたことを正式に報じたのだ。

Photo: エンタメステーション

Photo: Glastonbury Festival

Photo: Paul Grace Photography

2019年になり,BABYMETALがサポートダンサーの名前を事実上,公表した理由は何なのだろう。

そこには〈BABYMETALの物語性〉という要素が大きく影響していると私は考える。当人たちには申し訳ないが,平井沙耶よりも鞘師里保や藤平華乃の方が知名度が高い,というネームバリューの問題ではないと思う。

去年の12月に平井沙耶がサポートを務めておよそ1年ぶりに3人体制になった時,私は彼女がYUIMETALに代わる存在としてBABYMETALの正式メンバーになれるかどうかについて論じた(「原点回帰の3人体制へ!シンガポール&オーストラリアでBABYMETALが示した決意」)。その時に鍵になったのが,BABYMETALが有する〈物語性)だった。

BABYMETALには〈メタルレジスタンス〉や〈キツネ様〉というギミックに満ちた独特のストーリーと世界観がある。もちろんそれは虚構世界の話なのだが,一方でSU-METAL,YUIMETAL,MOAMETALの3人が2014年7月に「SONISPHERE FESTIVAL」のステージに立って以来,様々な困難に直面し,逆境をひっくり返し,数々の試練を自らの成長の糧として〈道なき道〉を突き進んできたのは,まぎれもない〈リアルな物語〉だ。彼女たちが描いてきた軌跡,紡いできた〈メタルレジスタンス〉のストーリーは,世界中の著名な小説家や脚本家が束になってかなわないほどのドラマと感動とパッションに満ちている。あまりにも濃厚で現実離れしているとさえ言えるそのようなリアルな〈物語性〉は,BABYMETAL最大の魅力であることは間違いない。

「3人目をどうするのか」というBABYMETALの根幹に関わるセンシティブな問題を,BABYMETALは自分たちの強みである〈物語性〉を手段として見事に解決してみせた。ピンチはチャンス。YUIMETALの穴をどうやって埋めるのか,という〈弱み〉を,〈物語性〉をより一層強化するひとつの手段として利用することにより,〈強み〉に変えてしまったのだ。これはもう,あっぱれとしか言いようがないリスク・マネジメントである。

つまりどういうことなのか。

平井沙耶には,BABYMETALの〈物語性〉を強化するエピソードが備わっていなかった。これは別に彼女が悪いわけでも何でもなく,ただ単に,そうであったというにすぎない。ダンスの技量は申し分ないように見えたし,BABYMETALによくフィットしていたと思う。しかし彼女は,BABYMETALの物語とは無縁の存在であった。

一方,鞘師里保と藤平華乃には,BABYMETALの〈物語性〉をよりドラマチックにする,あまりに濃厚なエピソードがあった(多くのファンに取ってはご存知の通り)。

鞘師里保はSU-METAL(中元すず香)のかつての同門にしてライバル。ともに幼い頃に在籍していたアクターズスクール広島では「ダンスの鞘師,歌の中元」「天才・鞘師,怪物・中元」と並び評された間柄。国民的アイドル・グループであるモーニング娘。の絶対的エースとしてその屋台骨を支え,グループ卒業後は渡米して語学とダンスの修行に励んでいたという経緯がある。

藤平華乃はアイドル・グループさくら学院の現生徒会長(リーダー)。SU-METALもMOAMETAL(菊地最愛)もさくら学院の卒業生にして元生徒会長なので,藤平華乃はいわば2人の直系だ。しかもBABYMETALはもともとさくら学院から派生したユニットというおまけつき。

鞘師里保も藤平華乃も,BABYMETAL(SU-METAL,MOAMETAL)とは縁がないどころか縁がありまくりの存在なのだ。そこが,2人が平井沙耶とは決定的に違う点であり,サポートダンサーとして加わることでBABYMETALにプラスαをもたらすことができる理由である。だからこそ,彼女たちの名は具体的に明かされたのだと思う(素性が明らかにされれば,ファンは勝手に物語を紡ぎ出す)。

そう考えると,今回は3人いるというサポートダンサーの最後の1人が誰なのかが非常に気になるところ。この記事の考察が正しければ,最後の1人もまた,BABYMETALとは深い縁がある人物であるはずだ。

そして,そこからさらに想像をたくましくするならば,いつの日か正式な3人目のメンバーが決まるとすれば,当然ながらその人もBABYMETALの〈物語性〉に沿ったエピソード(縁や絆)を持った人物であるに違いない。個人的には,それが水野由結であってほしいと切に願うばかりなのだが……。





コメント

  1. 別にべビメタ公式からは何も発表されてないじゃんw 過去のサポート、プロダンサーと全く同じ扱い。メディアとドルヲタが勝手に推測で取り上げて騒いでるだけ。っていうかまた、他の事務所所属のバッキバキのプロのダンサーにサポートして欲しいわ。

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  2. このコメントは投稿者によって削除されました。

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  3. 水野由結は自分の夢に向かって進むと決意表明した。それがダメだったら、またベビメタに戻ろうなんて気持ちは1ミリもない意志を感じる。YUIMETALではなく、いつか水野由結としてみんなと会えるようにすると。
    だから、水野由結が復帰したとき、もしSNSを開始しても、ゆいちゃんベビメタに戻ってくれ、なんて要求してはいけない。由結の心が病んでしまうよ。
    水野由結が復帰インタビューか何かで、「もうベビメタに戻ることは100%ありません。すーちゃん、もあちゃん、世界征服を応援しているよ」と言わない限り、厄介なYMYメイドはゆいちゃんカムバッークと叫ぶ続けるだろうね。

    「何度も考え直したのですが、私はこの度BABYMETALを辞めさせていただくことになりました。もう1度ステージに立ちたいという強い思いもありましたが
    今も体調が万全ではないこと、そして以前からの私の夢、水野由結としての夢に向かって進みたいという気持ちもあり、今回このような決断をいたしました。
    またいつか水野由結として皆様にお会いできるように努力し邁進します。
    8年間本当にありがとうございました。」

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