ライブ・ビューイング観戦レポ/「BABYMETAL RISES - BEYOND THE MOON - LEGEND - M -」

■ライブ・ビューイング

今回でLVは2回目だ。しかし前回は2016年4月のウェンブリー公演のLV。Zepp Divercity Tokyoで観たので,映画館でのLVは初体験。着席しての観戦はどんな感じなのだろう……とドキドキしながら観戦したのだが,結論から言うと自宅のリビングでBlu-ray作品でも観ているような感覚だった。もちろんリアルタイム中継されているというライブ感はあるし,何より映画館の大画面&大音響なので,自宅で観ているのとは迫力もケタ違い。しかし着席しているので身動きが取れず,身体全体でリズムを取ることもヘドバンすることもできない〈金縛り状態〉になってしまうのはストレス以外の何ものでもなく,その点では実際のライブ会場にいるのとは大違いだった。座ったままFOXサインを掲げるというのもなんだか気持ち悪くて……。同じLVでも,まだライブハウスでのLVの方がマシである。

とはいえ会場にいたのでは絶対に気づけないステージ上での様々な出来事や,パフォーマンスするSU-METALとMOAMETALの表情や仕草をつぶさに観ることができたのはLVならでは。特に今回は神バンドの面々が頻繁に大写しになったのも嬉しかった。けっこうアグレッシブかつアクションたっぷりにプレイしていて魂を感じた。

映画館でのLVを少しなめてたところがあるとすれば音響だ。ライブでいつも装着している耳栓はまさか必要ないだろうと思い持参しなかったのだが,実際にはさにあらず。全体の音量は爆音と言うほどではなかったものの,バランスが高音寄りだったのかSU-METALのハイトーンが時に音割れするほどだったのだ。耳が痛くなるシーンが多々あり,鑑賞後は翌日まで耳鳴りがやまなかった。低音はそれほどでもなかったので,シネプレックス幕張の音響は必ずしも良かったとは言えないのかもしれない。

■ダンサー・藤平華乃

この日の〈アベンジャー〉,すなわちサポートダンサーは多くの人が予想したように藤平華乃だった。横浜公演に続く2回目だったので多少は余裕もあったのだろう,最初からエンジン全開で,常に笑顔で歌いながらダンス。汗だくになって必死に,ひたむきに踊る姿は,かつてのYUIMETALやMOAMETALを見ているようだった。ダンスのスキル云々ではなくて,「このステージに全てをかける」という全身全霊感。鞘師里保との比較で言えば,今のところパフォーマンスのクオリティは鞘師里保に軍配が上がるだろうが,「青春そのもの」といった印象を強く与えるこのフレッシュ感は来月15歳にならんとする若さにしか成し得ないだろう。

その藤平華乃。SU-METALやMOAMETALはもちろん,同じサポートダンサーの鞘師里保と比べてもステージに立つという経験は圧倒的に不足しているのは頑然たる事実。修羅場をくぐり抜けてきた場数がそもそも違うのだ。それは雲泥の差であると言っていいだろう。ダンススキルでは決して見劣りしないが(BABYMETALのステージに立っているのだから当然だ),埋めるにはあまりにも巨大なその経験の差を,藤平華乃はがむしゃらさと熱意と笑顔で十分カバーしたと思う。そのひたむきさは,間違いなくYUIMETALとMOAMETALが5年前に見せた「それ」だ。ついでに言えば,彼女は顔立ちがどことなくMOAMETALに似ているので,パフォーマンス中の2人の「双子感」も観ていて楽しい。

さて,ここからは時系列で当日の出来事を追っていくとともに,各曲の感想を記しておく。

LV観戦者に配布されたお土産

■会場到着~入場

あいにくの雨模様の中,17時にシネプレックス幕張に到着。映画館の入口付近にはBABYMETALのTシャツを着た人の姿がちらほら。LVの会場となるスクリーン6のキャパは212人なので,「人がいっぱい」という感じはしない。

飲み物を買おうと売店の列に並んでいると,入場開始のアナウンスが。人が続々と館内に吸い込まれていくが,意外だったのはLV観戦者たちの服装。普段着姿の人が半数以上で,BABYMETALのTシャツを着た人は少数派だったのだ。私自身はといえば,前週の横浜アリーナ公演で買った最新のTシャツに身を包んで意気揚々と会場に乗り込んだので,ちょっと拍子抜けしたというのが正直な感想だ。

そんなことを思いながら,LV観戦者割引価格でジンジャーエールを購入し,いざ入場口へ。お土産の「オリジナル・スライダーケース」を受け取り,スクリーン6へと向かう。まわりにはポップコーンとドリンクを載せたトレを手にしている人もいる。映画を観るノリではないか……。

今回の座席は,後ろから2列目の最も下手側のブロック。事前に座席位置を確認した時には「ずいぶんと端だなあ」とちょっとがっかりしたが,実際に席に着いてみるとポジションはそんなに悪くない。しかも通路側の席なので人がいるのは左側のみ。期待に胸を膨らませながら,じっと開演の時を待つ。

■開演

17時30分,中継開始。LV会場内からはまばらな拍手が……。スクリーンにはポートメッセ名古屋の場内の様子が映し出された。もちろんPitを埋め尽くしたファンの人たちの姿も。スクリーン越しに,今か今かと待ち焦がれる期待感がひしひしと伝わってきた。ステージのレイアウトは横浜アリーナ公演と同じだ。Pitの中央には例の正八面体が物々しく鎮座している。

開演予定時刻を15分近く過ぎた17時45分頃,スクリーンの向こう側の世界が暗転。ついに「BABYMETAL ARISES - BEYOND THE MOON - LEGEND - M -」が幕を開けた。

00 オープニング

例の正八面体から蝶のように舞うスクリーンが飛び立ち,花道の上をステージへと移動。そのスクリーンには今までのライブでのMOAMETALの勇姿が映し出される。

移動体の中にはMOAMETALが入っており,手動で羽根を操作していた。スクリーンが蝶のようにはばたく仕組みは,実にアナログだったのだ。もはやスタッフと化すMOAMETAL。この日の主役なのに……。緊張していたのか高所ゆえ怖かったのか,その表情はこわばっているように見えた。

オープニングの基本的な流れは横浜公演と同じ。ただし1曲目のつなぎ部分はまったく違う。この日は「Vocal & Dance...SU-METAL」「Scream &Dance...MOAMETAL」とメンバーを紹介する時に,BABYMETALフラッグを肩に担いで仁王立ちする2人の姿がスポットライトで照らし出されたのだ。そのあまりのかっこよさに心底シビれた。1曲目が“Road of Resistance”だからこそ可能だった演出だ。

01 Road of Resistance

LVならではの特権だろうか,スクリーンに3人が大写しになったので,この日のサポートダンサーが藤平華乃であることがすぐに分かった。2回目のステージということもあり前回よりはリラックスしているようで,最初から笑顔全開。この曲に限らずだが,頻繁に歌う姿が印象的だった。

02 メギツネ

この曲での変顔対決は撮影隊も把握していたようで,その時になるとMOAMETALの顔が大写しに。MOAMETALは真顔のまま一瞬タメを作ってから「チュッ!」とSU-METALに投げKISS。

03 Elevator Girl

LVのカメラ・ワークが良かった。リアルタイムCG合成が施された映像が映し出された会場の大スクリーンと3人が踊るステージが,LVのスクリーンには見事に1画面に収まったのだ。このアングルはLVならではだろう。

04 Distortion

懸命に大きく身体を動かす藤平華乃の姿が印象に残る。特にサビの「歪んだ カラダ 叫び出す wow wow wow wo」と歌いながら腕を左右斜めに動かして身体をひねるところ。「大きく,大きく」と意識していることがよく分かる動きだった。

05 新曲(シャンティ/仮)

“PA PA YA!!”ほどではないが,この曲も一度聴いたら病みつきになる強烈な魅力を持っている。インドっぽい世界観と個性的なダンスもさることながら,曲をグイグイと力強く引っ張っていくギダーがクールだと思う。

06 Starlight

SU-METALの至高の歌声が宇宙に響き渡ったが,LV会場では音割れが発生しかかった。高音がキンキンと耳に痛い。耳栓を持ってこなかったことが最も悔やまれた瞬間。

07 シンコペーション

この曲でも,目立ったのは身体全体を目一杯大きく動かして踊る藤平華乃の姿。前傾姿勢で腕をグルグル回しながら上体を起こすあたりの所作に,その雰囲気は顕著だったと思う。

08 ヤバッ!

「ヤバッ!」と言って静止するシーンが捉えられたのはMOAMETALのみ。残念ながら藤平華乃の表情が抜かれることはなかった。この曲では“Elevator Girl”に続いてリアルタイムCG合成の演出が導入され,中間部のダンスでは両手から稲妻が放たれていた。かっこいい。

09 PA PA YA!!

ライブ会場はものすごい盛り上がり。LV会場でも何人かの観客がタオルを振り回していた(動作は小さかったけど)。ラップ・パートでは横浜公演の映像が用いられ,F.Heroが〈出演〉したが,できることなら生出演してほしかった。今や彼は大切なBABYMETALファミリーなのだから。

10 ギミチョコ!!

“PA PA YA!!”がもたらした熱狂の余韻が残る中,ここでも藤平華乃の一挙手一投足に目を奪われた。この曲は他の曲以上に表情の変化がカギになるが,笑ったり,困り顔になったり,クルクルと変わるその表情はフレッシュな魅力に満ちていた。

11 KARATE

KARATEはライブを重ねるごとによりエモーショナルになってきていると思う。SU-METALが倒れた2人に手を差し伸べて助け起こすシーンがエモいのはもちろんだが,サウンドのあの重心の低さ,グルーブ感,炎を用いた視覚効果,奮い立つ歌詞,そしてSU-METALの孤高の歌声。すべてがエモーショナル。

12 ヘドバンギャー!! feat. MOAMETAL 

前日の名古屋公演1日目の感想がTwitter上に流れていたこともあり,ほとんどの人はこの曲をMOAMETALが歌うことを知っていたはずだ。イントロが鳴り響いた瞬間の「さあきたぞ!」というはち切れんばかりの期待感はLV会場内にも充満していた。

中盤の土下座ヘドバンまでは通常通りの展開で,歌うのはSU-METAL。2018年12月の「LEGEND -S-」の時と同じく「15の夜」という歌詞を「20の夜」と変えて歌ったが,ほとんどのファンにとってこれは想定済みだろう。ブレイク・パートになり,土下座ヘドバンが始まろうかというタイミングで,SU-METALが厳かな面持ちでMOAMETALにマイクを渡す「儀式」が執り行われた。聖なる宝物でも賜ったかのように重々しい雰囲気でマイクを受け取ると,それを高々と掲げるMOAMETAL。いつになく真剣な表情で仁王立ちするその姿は,普段のMOAMETALからは想像がつかないほど威厳に満ちていた。もはや〈かわいい〉は完全排除。SU-METALのようにクールでかっこいいMOAMETALの姿がそこにはあった。

モアバンギャー!!ではSU-METALのダンスを堪能できるのも楽しみの一つ。例によって長い手足と関節の柔らかさが際立つ動きは超個性的。MOAMETALも5年前に比べて歌が上手くなっていたなあとしみじみ。

このところポンコツっぷりをほぼ完全に封じ込めていたSU-METALだが,今日はこの曲でで久しぶりにほころびが生じた。終盤でMOAMETALが「ヘドバンギャー!!」と絶叫した直後のシーンで,SU-METALのベビーヘドバン(左右に首を振る動作)の向きがMOAMETAL&藤平華乃と左右逆になるというまさかの事態に。「あれ!?」という感じで焦って修正を試みるも合わせきれなかったところがまた味わい深い。

途中,MOAMETALの歌声が少し遅れ気味になったが,あれは何だったのだろう。イヤモニの調子が悪かったのか,それとも何らかの小さなトラブルが生じたのか。

13 新曲(Shooting Star/仮)

MOAMETALがアコギを弾く新曲は,ギターを使った演出よりもMOAMETALのコンテンポラリー・ダンスが強く印象に残る。情熱的でメッセージ性に富み,とてもドラマチック。舞台を見ているようだった。

ステージ中央の台座に置かれたアコギは,誰がどう見ても故・藤岡幹大のモチーフだ。そのギターにそっと手を置き,慈しむように優しく撫でるMOAMETAL。万感の思いが込められたこのシーンは,間違いなくこの日のライブのハイライトのひとつだった。この曲が小神様こと藤岡幹大へのレクイエムだとすれば,“Starlight”と対をなす曲だと思う。

14 新曲(アルカディア/仮)

LVでば歌詞が聞き取りにくかったことが残念。かの名曲“イジメ、ダメ、ゼッタイ”に代わるアンセムになりそうなメロディック・スピード・メタルど真ん中のこの曲は,RoRに続いてDragonFoeceのサムとハーマンが作曲したのではないかという気がする。それくらい「らしい」曲だと感じた。

■終演

最後の「We are BABYMETAL」のコール&レスポンスで「言う?」という感じでマイクを一瞬MOAMETALの口元に近づけたSU-METAL。しかしすぐに引っ込めて自分で「We are!?」と絶叫。MOAMETALが「ぶうっ」とふくれっ面をしてSU-METALの肩をグーでポンと叩くという,何とも微笑ましいシーンが。2016年の東京ドーム以来となるこのやり取り。今後もネタになるのだろうか。

【セット・リスト】

00 紙芝居
01 Road of Resistance
02 メギツネ
03 Elevator girl
04 Distortion
05 新曲(シャンティ/仮)
06 Starlight
07 シンコペーション
08 ヤバッ!
09 PA PA YA!!
10 ギミチョコ!!
11 KARATE
12 ヘドバンギャー!! feat. MOAMETAL
13 新曲(Shooting Star/仮)
14 新曲(アルカディア/仮)





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