レビュー/BABYMETALのベスト盤「10 BABYMETAL YEARS」
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10 BABYMETAL YEARS / BABYMETAL 2020年12月23日発売(初回限定盤A/初回限定盤B) テッド・ジェンセンによるリマスタリングによって,特に昔の曲ほど音質が向上した。全体的に音像がクリアになり,各楽器の音の輪郭が明瞭になったと感じる。特にドラムにその影響は大きく出ている。アタック音がマイルドになってバスドラとスネアの音が聴きやすくなった。加えてシンバルの繊細な高音もクリアに。このような表現が合っているかは分からないが,上品なドラム・サウンドに仕上がっていると思う。どの曲も空間的な広がりがより感じられるようになった。過剰に音が詰め込まれた作品があふれ,音圧も音の密度もひたすら「強く,高く」を追い求めるケースが多い中,「押す所は押し,引く所は引く」というテッド・ジェンセンの「引き算の美学」とでも言うべき仕事っぷりは称賛に値する。 スタジオ・アルバムが3枚しかない中でのベスト盤なので,収録曲が全10曲というコンパクト仕様なのは当然だろう。問題は曲のセレクションだが,これはもう言い出したらきりがない。リストはファンの数だけ存在するだろうし,コアなファンにとっては「全部がベスト」であるはずだ。BABYMETALが提示してきたものを謹んで受け取るしかない。 とはいえ,収録されている10 曲はとりあえず誰もが納得するであろう珠玉の10 曲であることは間違いない。1stから5曲,2ndから3曲,3rdから2曲というバランスも妥当だ。いずれも公式MVになっており,BABYMETALを代表する曲ばかり。変化球的な曲やクセが強い曲(いわゆる「なんじゃこりゃ!?」路線)ではなく,BABYMETALなりの王道路線を行く,剛球一直線な曲が中心になっているという印象だ。だからといって同じような曲が並んで一本調子になっていない点が素晴らしい。アルバムをリリースするごとに曲のテイストの振り幅を大きく広げてきたBABYMETALの変化がよく分かる。いたずらに曲の順番に凝らずに,時間軸に沿って1stから順番に並べただけのシンプルな構成にしたのは正解だ。 以下,リマスター盤との差が特に顕著な1stアルバムの5曲について,オリジナル盤との比較を簡単に記してみた(あくまでも主観)。 01 ド・キ・ド・キ☆モーニング リマスターの恩恵を最も受けたのは,おそらくこの曲だろう。地を這...