レビュー/まさかの曲も披露された充実の企画!BABYMETAL結成10周年企画「STAY METAL STAY ROCK-MAY-KAN」

「STAY METAL STAY ROCK-MAY-KAN」は素晴らしい企画だった。選曲は発売間近のベスト・アルバムにほぼ沿っており,収録予定の10曲中8曲が披露された(披露されなかったのは“イジメ、ダメ、ゼッタイ”と“THE ONE”)。びっくりしたのがサウンドの素晴らしさ。特に1stアルバムや2ndアルバムの曲は音質が劇的に向上していたように思う。音像がクリアになってメリハリが効いており,ソリッドなサウンドになっていると感じた。たとえば冒頭の“ヘドバンギャー!!”はドラムの音がとてもタイトだし,続く“ド・キ・ド・キ☆モーニング”は音像がクリアになってこの曲が元来有していた地を這うようなグルーヴ感がいっそう強調されていると思う。ひょっとしたらテッド・ジェンセンがマスタリングを手掛けたベスト・アルバムの音源を流用したのではないかという気がする。このライブでは神バンドの姿がステージ上には見られなかったことも,そう考える一つの根拠。

曲によってはサンプリング音源が未使用だったり,合いの手が無音だったりするものもあった(“ヘドバンギャー!!”の「ヴォイ!」や“メギツネ”の「ソイヤソイヤ」など)。意図的にそうしたのかどうかは定かではないが,それは本来のライブであればオーディエンスが叫んだであろうパート。あえて無音にすることで視聴者に対して「自宅で叫べ!」というメッセージを送っていたのかもしれない。一体感を醸成するための苦肉の策か。

結成10周年企画ということもあり,ステージ後方に設置されたモニターには演奏中の曲の過去映像が流されるという心憎い演出も。視聴中の画面にも随所に過去映像が挟まれ,今までBABYMETALが歩んできた道のりを視覚的に振り返りながらパフォーマンスが楽しめる。特に初期の映像のインパクトは強烈で,3人の幼さが際立つ(特にYUIMETALとMOAMETAL)。成長期の10年という時の流れがいかに濃密で劇的であるかということがよく分かる。

わずか8曲のセット・リストではあるが,最もインパクトがあったのは2曲目の“ド・キ・ド・キ☆モーニング”だったのではないか。「KAWAII METAL」を象徴する初期曲は最近のライブでは封印されているため,まさか「大人カワイイ」路線にかじを切った今のベビーメタルがこの曲を披露するとは完全に予想外だった。しかもSU-METALが思いっきり「あざとかわいく」歌っていたのが印象的だった。

そのSU-METAL。無観客配信というスタイルだったとはいえ久しぶりのライブで気持ちが高ぶったのか,“PAPAYA!!”で声が若干上ずり気味だったように感じた。また,全体的に歌い方が変化しているようにも感じられたが,これはたぶん今年の1月からSU-METALの歌をリアルタイムで聴いていないせいだろう。数ヶ月おきにライブに参戦してSU-METALの変化を確認する機会が今年はなかったので,変わったなぁという印象を強く受けたのだと思う。

かたやMOAMETAL。鹿鳴館のステージは小さいのでさぞかし踊りにくかったのではないかと推察するが,そこは百戦錬磨のプロ。小さくまとまってしまうことはなく,いつものようにしなやかでキレのある動きだった。見事にアジャストしていたと思う。

終盤にはSU-METALとMOAMETALの貴重なインタビュー動画が流された。幼い頃から10年にわたってメタルの英才教育を最前線の現場で施されてきた2人の高い志と強い意志,そして覚悟に胸が熱くなった。メタルの魂そのものを見事に体現していながら,それでいてどこまでもたおやかで美しい。特にMOAMETALの様子が良い意味で意外だった。時間をかけて考えながら自分の言葉でしっかりと話す様子は実に聡明で,とても大人。元気一辺倒だった印象が強い10代半ばの頃の姿からは様変わりしている。むしろSU-METALよりも精神年齢は上なのではないか。

いよいよ1月からは前人未到の日本武道館10公演が始まるが,いったいどのようなコンセプトのライブになるのかが非常に気になるところ。心して待ちたい。

【セット・リスト】
01 ヘドバンギャー!!
02 ド・キ・ド・キ☆モーニング
03 メギツネ
紙芝居
04 ギミチョコ!!
05 PA PA YA!!
髪自賠
06 Distortion
07 KARATE
インタビュー
08 Road of Resistance



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