レビュー／BABYMETALの映像作品「LEGEND

レビュー／BABYMETALの映像作品「LEGEND - MM」は見どころ満載

- 7/20/2024 02:13:00 午後

BABYMETAL WORLD TOUR 2023-2024 LEGEND - MM / BABYMETAL
2024年7月発売／【Amazon限定】完全生産限定盤

2024年3月2日と3日の2日にわたって横浜アリーナで行われたBABYMETALのライブを完全収録した映像作品。私が購入したのはAmazon限定の完全生産限定盤で，ジャケットシートとコットン巾着がバンドルされたアナログサイズジャケット仕様である。

見どころ①：MOMOMETALが歌う特別な2曲

このライブは，2023年4月の公演「BABYMETAL BEGINS」で晴れて正式にBABYMETALのメンバーとなったMOMOMETALの生誕を祝う特別なものである。それがこの公演最大の見どころであることに異論を差しはさむ余地はない。MOMOMETALがメイン・ヴォーカルを務めるという特別な演出が施された1日目の“ヘドバンギャー！！”と2日目の“META！メタ太郎”を刮目して鑑賞すべし。デス・ヴォイスとアイドル声という真逆のスタイルを取り入れて堂々と主役を演じ切ったでMOMOMETALは生粋のパフォーマーだと痛感させられる。特に“ヘドバンギャー！！”冒頭のMOMOMETALの表情に注目だ。ライブ当日に会場内のスクリーンに映し出されたカットだが，いかにもBABYMETAL然としたクールで凛々しくシリアスな表情は何度見てもゾクゾクするほどかっこいい。

見どころ②：あふれんばかりの光

シンプルなステージ・セットながら，巨大スクリーンに映し出される映像と派手に飛び交うレーザー光線が織りなす視覚効果は洗練されていて上品かつゴージャス。観客が手首に装着した神器（腕輪）が曲によって幻想的に明滅する様も美しい。私はこのライブを2日とも会場で体験したが，こうして映像化された作品を改めて鑑賞すると，この公演がいかに光を効果的に使った演出をしていたかということがよく分かる。世界を見渡しても，このような演出をしているメタル・バンドは皆無と言っていいのではないか。シアトリカルなステージを見せるメタル・バンドはいくつかあるが，光まばゆいBABYMETALのステージはどちらかというとポップス系アーティストの系統に属すると思う。

見どころ③：3人の表情

パフォーマンス中にSU-METAL，MOAMETAL，MOMOMETALの3人が頻繁にアイコンタクトを交わしてコミュニケーションを取っている様子がよく分かるのも映像作品の面白さである。曲に合わせてクルクルと表情が変わり，随所で笑顔が弾けていることが強く印象に残る。2023年のワールド・ツアーで90回以上のライブを積み重ねてきた経験に裏打ちされた余裕のなせる技だろう。3人はいつにもましてリラックスした様子でライブを楽しんでおり，一挙手一投足から多幸感があふれ出ているように感じる。まるで果たし合いに臨むようなヒリヒリした緊張感を伴って汗だくになりながら歌って踊っていた10年前とは大違いである（当たり前か）。

見どころ④：久しぶりに披露されたレア曲

個人的には，このライブ最大の見どころは近年では「お蔵入り」となっていた曲が久しぶりに日の目を見たことである。1日目の“DA DA DANCE”，“Shanti Shanti Shanti”，“Kagerou”，“シンコペーション”，2日目の“Elevator Girl”，ヤバッ！”，“Brand New Day”，“Starlight”，“Arkadia”。以上の9曲がそれだ（厳密に言えば“META！メタ太郎”も該当するが）。

これら9曲はいずれも3rdアルバム「METAL GALAXY」（2019年）に収録されているが，最近のライブではこのアルバムからセット・リストに組み込まれる曲は“Distortion”と“PA PA YA!!”，“BxMxC”くらいだった。それ以外の楽曲を，多くのライブを積み重ねて表現力にさらなる磨きをかけた最新型BABYMETAL（当時）が披露するのだから，ファンとしてこれ以上嬉しいことはない。しかもこれらの楽曲を演奏するのは「西の神」である。面倒なので調べていないが，これら9曲を「西の神」が演奏したことはほぼ皆無なのではないだろうか。それだけでもレア度が上がるというものだし，それより何より「西の神」が生み出す迫力満点の超重量級サウンドで「METAL GALAXY」の曲を楽しめるという点がありがたい。

見どころ⑤：完全版“Arkadia”

さらに個人的なことを言うならば，BABYMETALの数ある楽曲群の中でも特に大好きな“Arkadia”を西の神による演奏で体験できたことが何よりも嬉しかった。この曲がライブで披露されたのはおそらく2020年1月の幕張公演以来およそ4年ぶりのことであり，そもそもこの曲がライブで演じられること自体が3度目のはず。レア度で言えば，かの“Tales of The Destinies”と並び称されるレア度なのだ。

聴く者を力強く勇気づける歌詞と疾走するリズム，まばゆいばかりに光り輝く究極的に明るく開放的な“Arkadia”。この感動的な曲がライブで復活したのはとても喜ばしいことなのだが，実はこの曲がライブで披露された過去2回はいずれもBABYMETALが3人目のメンバーをサポート・メンバーに頼っていた時代だった。極めてメッセージ性が強い（脱退したYUIMETALに向けた曲だとも言われるほどの）この曲を，晴れて完全体となったBABYMETALが「本当のBABYMETAL」として初めて披露する“Arkadia”は，この横浜公演が初なのである。それもまたエモーショナルと言うか，BABYMETALが有する物語性を象徴するエピソードだと強く感じるのであった。

【収録曲】
[Disc-1] 20 NIGHT
01 BABYMETAL DEATH
02 メギツネ
03 DA DA DANCE
04 Shanti Shanti Shanti
05 Kagerou
06 MAYA
07 BxMxC
08 シンコペーション
09 Monochrome
10 メタり！！
11 ギミチョコ！！
12 ド・キ・ド・キ☆モーニング
13 THE ONE
14 ヘドバンギャー！！
15 Road of Resistance

[Disc-2] 21 NIGHT
01 BABYMETAL DEATH
02 Distortion
03 PA PA YA!!
04 Elevator Girl
05 ヤバッ！
06 Believing
07 Brand New Day
08 Starlight
09 KARATE
10 メタり！！
11 ギミチョコ！！
12 ド・キ・ド・キ☆モーニング
13 THE ONE
14 META！メタ太郎
15 Arkadia