レビュー／BABYMETALのお祭りソング”PA PA YA!!”

PA PA YA!! （Feat. F.Hero）／ BABYMETAL

2019年6月28日 配信開始



横浜アリーナ公演前日に配信開始されたBABYMETALの新曲は，タイのヒップホップ・シンガーFucking Heroをフィーチャーした「お祭りソング」だった。まさかとしか言いようがないタイのアーティストとのコラボ，しかもそのアーティストはロック／メタル系ではなくヒップホップ畑。最近のBABYMETALのイメージからは容易にたどり着けないアーティストとの共演である。4月に発売された『PMC vol.13』のインタビューでSU-METALが言っていた「BABYMETALはもっと面白いものだと思っているんです」という発言は，このようなチャレンジを指していたのだと今さらながらに納得。前例踏襲，思考停止，先入観，守りの姿勢……そんな悪しき慣習や慣例とは無縁の，あまりに自由すぎるBABYMETALの面目躍如と言っていいだろう。

コラボの相手は意外性に富んでいるが，曲そのものはそこまでの変化球ではない。今までにない曲調でありながら，聴けば聴くほど「BABYMETALらしい」と感じられるから不思議だ。“いいね！”や“メギツネ”の系統に属する，ダンサンブルなアゲアゲお祭りソングだと思う。アップテンポかつヘヴィでありながら，どこか和のテイストを感じさせるアレンジの妙。激しい音の洪水の中には，日本の祭りの風景が確実に存在している。この曲を初めて聴いた時，私はなぜか北島三郎の“まつり”をイメージしてしまった。

細かい所では，SU-METALの歌い方が興味深い。「祭りだ 祭りだ」の「り」を巻き舌で発音してるのだ。他にもラ行の音で始まる言葉のいくつかで同様の発音の仕方をしている箇所がある。これらが本当にSU-METAL自身の発音によるものなのか，それともエフェクト処理したものなのかは定かではないが，いずれにしても「SU-METAL，攻めてるなあ」という印象を受ける。全体的に日本語を外国語っぽく発音して（というか歌って）いるようにも感じられ，一語一語綺麗に発音するSU-METALにしては珍しい。「SU-METALはこんな歌い方もできるんだ」と素直に驚いた。

この記事を書いているのは，横浜アリーナ目指して移動中の電車内。目当てはもちろんBABYMETALのライブだ。“PA PA YA!!”はおそらく今日のライブで初披露されるだろうが，超攻撃的なこのお祭りソングに，いったいどのような振付がなされるのか。今から楽しみで仕方ない。