またしても名言ザクザク!「別冊カドカワ 総力特集 BABYMETAL」

BABYMETALの結成10周年を記念して発売された『別冊カドカワ 総力特集 BABYMETAL』は,例によって名言のオンパレードだった。彼女たち自身が発する言葉に接する機会はめったにないので,4万字を超えると歌われている超ロングなインタビューは,ファンにとってはまさにバイブル。今回は気になった発言をいくつかピックアップしてみた。


まずはSU-METALから。
すごく印象に残っているのは,初日の大阪のライヴかな。初めての全曲生バンドっていうライヴで,その時に記憶が飛んだことを覚えてます。ライヴをしている自分とは別に頭の上辺りからライヴを楽しんでいる自分がいて,誰かにあやつられているかのように思い通りに出したい声が出て,気持ち良かったです。絶対成功するってどこかのタイミングでわかって,ただライヴを楽しんでいました。
2012年5月の「BABYMETAL DEATH MATCH TOUR 2012-五月革命-」についてのコメント。このエピソードは今までにも何回か語られてきたものだが,「五月革命」初日の大阪公演でのこととピンポイントで語られたのは今回が初めてではないかと思う。すでに8年も昔のライブになるが,それが今でも強烈に印象に残っていることに驚きを禁じえない。当時のSU-METALは中学3年生。この時はいわゆる「ゾーンに入った」のではないかと推測するが,その後似たような経験はなかったのかが気になるところ。
「メギツネ」は自分にとって未だに課題曲です。この曲は全ての基礎が入っていて,自分の苦手な音域,速いリズムと流れるメロディー,歌とダンスの呼吸を合わせたり…なのでこの曲を基礎練習として歌って今の自分の課題を見つけています。
素人ながらに難しい曲なんだろうなとは思っていたが,調子のバロメーターを計る正真正銘の課題曲であり,ライブ前のウォーミングアップでも歌う曲でもあることを初めて知った。この曲がリリースされたのは2013年。当時と今とではSU-METALの歌唱法はまるで異なるだろうが,それでも7年もの間(そしておそらくこれからも)課題曲であり続けるという点が興味深い。それだけ多くの要素が詰め込まれているからこそ,“メギツネ”はライブで欠かせない名曲でもあるのだろう。
バックヤードのケータリングの場所とかでかなり目立つんですよ,私たちって。メタルフェスで,小っちゃい女の子たちがウロウロしてるってことが殆どないですからね。
彼女たち自身の言葉でバックヤードの様子が語られることは珍しい。欧州のフェスを転戦するようになった2014年は,SU-METALが高校生,YUIMETALとMOAMETALは中学生であった。欧米の人たちにとって日本人は実年齢以上に幼く見えるようだから,バックヤードをうろつく3人は,さぞかし子ども子どもして見えたに違いない。しかも多くの場合,周辺にいるのは屈強なメタル系アーティストとその関係者ばかり。端から見たらシュールな光景であることは明らかだ。
楽屋が近かったので,一緒に筋トレやストレッチをやらせてもらったんですけど,私たちは全然ちゃんとできなくて(笑)。
レディー・ガガのサポート・アクトを務めた北米ツアーについての発言。色々とかまってくれたらしいガガ様の優しさが感じられるエピソードだ。3人がまだ未成年の子どもだったから気にかけてくれたという側面もあるだろうけど,そうではなくて同じアーティストとして対等の立場から声をかけてくれたという側面もあるのではないかと推測。当時のガガ様の心境が知りたい。
ワンマンなのにどこかアウェーに感じた環境というのが初めてで。(中略)想像してた状況と違ったので,最初は少し戸惑いがありましたね。曲が進むにつれて楽しんでいる雰囲気が伝わってきましたけど,最初の3曲くらいはちょっと怖さも感じてました。
2016年4月のウェンブリー公演についての感想。2018年のツアー初日(米・カンザスシティ公演)がいろいろな意味で特殊な状況だったため「ホームなのにアウェーを感じた」といようなことを言っていた記憶はあるが,飛ぶ鳥を落とす勢いの2016年にホームであるにもかかわらず「怖さも感じてました」というのは驚きだ。海外での単独公演としては最大規模だったので,恐れすら感じるのは当然といえば当然か。それでも“THE ONE”では今でも信じられないくらい感動的な光景を作り出したのだから脱帽だ。
これは今だから言えるんですけど,この曲が始まって10秒くらいで音を見失ったんですよ。それで1番の間は,ほぼずっと音を見失った状態でライヴをしていて。それがすごく悔しかったんです。相当難易度が高いので,今すぐに披露できるかと言われたら,それもわからないです。失敗する可能性が高いから披露するのが怖いって思う反面,いまだに悔しくて,リベンジしたいっていう想いもある曲ですね。
2016年の東京ドーム公演で披露された“Tales Of The Destenies”について。この曲がライブで披露されたのは今のところこれが最初で最後。誰が聴いても屈指の難曲であることが明白なこのプログレ・メタルを,東京ドームでは見事に演じ切ったとしか感じられなかった。素人目には完璧に近い仕上がりだったと思うが,おそらく相当ギリギリの線でパフォーマンスしていたのだろう。やるからには当然のようにやり切ってしまうあたりに彼女たちのプロ意識の高さを感じる。
MOAMETALを私が支えなきゃと思っていたのに,自分に全然余裕がなくて,リズムが上手に取れない曲ではダンスで指揮をしてくれたり,私の方がたくさん助けてもらいました。その時MOAMETALが私が思っていたよりも強くて,大人になっていたことを知りました。
2017年12月の「LEGEND - S -」についてのコメント。YUIMETAL不参加という非常事態下でのライブだったので,SU-METALにとってもMOAMETALにとっても想像を絶するほど大変なライブだったはず。もがき苦しむSU-METALに対して「ダンスで指揮をした」というMOAMETALに俄然興味が湧いた。具体的にはどの場面で,どのようにしたのだろう。ダンスを通して歌い手のリズムを修正するなどという芸当が,いったいどうやったらできるのだろう。
もしも“彼女”が一緒にこの曲を踊るとなったら,どういうふうに踊るのかなって考えたりもして。
ここでの「この曲」とは“Starlight”のこと。いわゆる「光の三部作」の最初に位置する曲であり,YUIMETALがBABYMETAL脱退を正式に宣言したのと同じ日(2018年10月19日)にリリースされた曲でもある。そのメッセージ性はYUIMETALの旅立ちを願うようでもあり,あるいは同年1月に亡くなった小神様こと藤岡幹大さんを偲ぶようでもある。いずれにしてもスケールが大きい感動的な名曲なわけで,それをYUIMETALが踊る姿などというものは,想像しただけで涙が出てきてしまうくらい魂を揺さぶられる。
「ああ,無理だな」って。
「LEGEND - M -」の“ヘドバンギャー!!”で途中からMOAMETALがメイン・ヴォーカルを務めた時に,SU-METALがMOAMETALのダンス・パートを踊ってみた感想。楽しかったと感じる一方で,「結構ヘロヘロに」なり,このように感じたらしい。このサバサバとした表現の仕方がSU-METALっぽくて好きだ。

続いてMOAMETAL。
私,昔から替え歌とか作るのが結構得意なんですよ。また,SU-METALにお題を出してもらって,即興でちょっと作ってみたいなと。今だと食べ物の歌になりそうですね。メタルの要素はサウンド面にお任せして,「からあげの歌」でも作ろうかな(笑)。近い将来,形になるように実現できるといいんですけど。
実にMOAMETALらしいコメント。10年経っても食べることが大好きということは変わらないんだなぁと,長らく見守り続けてきたファンは思わずほっこりしてしまう。ところでBABYMETALが恐ろしいのは,半ば冗談としか思えないこの話が,数年後に実現してしまう可能性があるということ。油断は禁物だ。
フェスでのトラブルに対処する方法も学んだし,そんな状況になっても「やっちゃおうぜ!」みたいな楽しさがあったので,どんどん気持ちが上がっていきましたね。
2014年7月の「SONISPHERE FESTIVAL」についての発言。このフェスでは,分かりやすいところではオープニングの“BABYMETAL DEATH”でMOAMETALのイヤモニに音が流れず,初動が遅れたというハプニングがあった。当時のMOAMETALは中学生。海外で,しかも6万人の大観衆を前にしても動じない肝っ玉の大きさには感服するしかない。それどころか「やっちゃおうぜ!」とピンチを楽しんでしまうこの姿勢。これはもう,持って生まれた才能だ。
ガガさんの髪が私のグローブに引っ掛かって,毛が1本だけ抜けてしまったんですよ。それに後で気が付いて,その髪の毛をどうしようかと思ったんですけど……今でも大切に取ってあります。
これもMOAMETALらしいエピソード。もともとアイドル好きを公言してはばからなかったが,そのオタク気質は今持って健在なのかもしれない。
あの法螺貝の音色を聴くと,私もウォール・オブ・デスに参加してみたいなって気持ちになるんですよ。
リップサービスだと思うが,もし本気の発言だとしたらファンとしてこれほどワクワクすることはない。実現する可能性は限りなくゼロ。それでも「俺たち/私たちと一緒にもみくちゃになってもいいと思ってるんだ」と感じさせる発言で,THE ONEの精神がしっかりと宿っていると思う。
「あれがメタル界で有名なジューダス・プリーストか!」と驚いていました。
2015年の「ROCK ON THE RANGE」でJUDAS PRIESTに初めて会ったことを受けての発言。特に変わったことを言っているわけではないのだが,なぜかニヤニヤしてしまう。なぜだろう。味わい深い。
6月の「KERRANG! AWARDS」で会ったブリング・ミー・ザ・ホライズさんが,8月のレディング&リーズ・フェスティバルの時にライヴを観に来てくれて,急にメタル界に友達ができた瞬間でしたね。一度会ったら友達ですから(笑)。
2015年のワールド・ツアーについて。「一度会ったらお友達」――この屈託のなさは10代の女の子ならでで,その無敵っぷりはその世代のの強み以外の何ものでもない。どんな強面のメタル・アーティストであっても,彼女たちに頼まれたら満面の笑みをたたえて一緒に写真に収まってしまうというマジックが働くのだ。2017年1月にGuns N' Rosesのサポートを務めた時に撮影されたズッ友写真はその象徴。
ツアーとツアーの合間に公園に行って,そこで自主的にリハーサルをよくしてました。今じゃ考えられないんですけど,海外だけじゃなく,日本でも3人揃って公演で練習してたんです。
2015年頃のこと。たぶん,そうとは知らずに彼女たちの自主練の様子を目撃していた人はいるのではないかと思う。ここで言う公園というのが一体どれくらいの規模の公園を指しているのか不明ではあるが,どこにでもあるような町中の公園であるなら,これはもうBABYMETAL史上最大級の「まさか」だと思う。
終わってからYUIMETALと抱き付き合ったっていうぐらい納得がいかなかったんですよね。うれしくて抱きついたんじゃなくて,お互い悔しい想いがあって,終わった瞬間に抱き付いて泣いてしまったという。それまで練習してきて,きっちりと消化できたはずだったんですけど,何かが届き切れなかったというか。
2016年4月のウェンブリー公演についての発言。ファン目線ではどう考えても大成功としか言いようのないライブだったと思うのだが,YUIMETALとMOAMETALにとっては悔いが残るライブだった模様。具体的にどのような点に納得ができなかったのかが知りたい。いずれにしても,この向上心の塊のようなエピソードもまた,BABYMETALの魅力の一つだろう。
体力面は結構余裕がありました。最後の曲まで全然疲れなかったし,いろいろな経験を経て,強くなったなって感じられましたね。東京ドームの時にはもう,全然怖いものなしにライヴを作りあげていけていたと思います。
2016年9月の東京ドーム公演2デイズについてのコメント。ここまで力強く自信満々に言い切るアーティストは,特に日本では多くないと思う。この強気の発言が嫌味に聞こえないのは,彼女たちがそう言い切れるだけの経験を積んできたことをファンは知っているから。けっして根拠のない自信ではないのだ。
私は,特に女性限定の「赤キツネ祭り」が楽しくて。(中略)みんな香水とかを付けているのですごくいい匂いで,お花畑の中で踊っているような感覚になるというか(笑)。
2017年の「五大キツネ祭り」はライブの対象が5種類に区分された。「赤キツネ祭り」は女性限定のライブ。映像作品を観れば「赤キツネ祭り」の特殊性は一目瞭然で,SU-METALもYUIMETALもMOAMETALも通常のライブでは見れないような楽しげな表情を見せていた。まるで女子校の文化祭のような雰囲気を誰よりも楽しんでいたのは,実はステージ上の3人だったのかもしれない。
BABYMETALを愛してくれてるからこそ,いろんな意見があるのはわかるんです。だけど本当に思ってくれるのなら,私たちは今が最新で最強だと信じているので,今のBABYMETALの試みをしっかりと見届けて,感じてもらえたらうれしいですね。目の前にいる私達以外のところに心が行ってしまうのはステージに立つ身としては寂しいことなので。
2018年のコンセプト「ダークサイド」にまつわる発言。至極もっともなコメントだと思う。すべてのファンを納得させることなどできるわけがない。当時のBABYMETALにできたのは,自分たちが「これ」と信じたことを愚直にやりきることだけ。その変化を受け止めきれるかどうかは,ひとえにファンの感性と度量にかかっていたのだ。
「ヘドバンギャー!!」ではリードボーカルも取りましたけど,純粋に楽しかったですね。センターに立ってマイクを持った瞬間,すごく……快感でした(笑)。
2019年7月の「LEGEND - M -」はMOAMETALの成人を祝う生誕祭だった。いつもはSU-METALの横が定位置のMOAMETALも,この日のこの曲に限ってはSU-METALを従えてセンターに立ち,マイクを握る。それが快感だったと言い切る点に,MOAMETALのスター性を感じる。本来MOAMETALは,どこであろうと主役を張れる人なのだ。 

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