BABYMETALがついに紅白歌合戦に出場決定！

 BABYMETALが「第71回 NHK紅白歌合戦」に出場することが11月16日，発表された。

多くのファンにとっては諸手を挙げて大歓迎の紅白初出場決定だろう。テレビはオワコンだと言われて久しい中，それでも昨年の視聴率は第1部＝34.7％で，第2部＝37.3％。一昨年以前もコンスタントに35％～40％を叩き出すモンスター番組なのだ。マンネリが指摘されたり演出や選考基準が物議を醸したり，何かと話題になる番組だが，今なお日本人にとっては抜群の知名度を誇る国民的歌番組であることに変わりはない。そんな「出場することがステータス」になる番組に，ついに「世界のBABYMETAL」が出場するのだから，これはもう素晴らしい話以外の何ものでもないだろう。

もちろん，気がかりな点を挙げればきりがない。たとえば……

・曲が短く編集されてしまうのではないか。
・独特の茶番劇，司会者と出演者の珍妙な掛け合いに巻き込まれてしまうのではないか。

要するに紅白歌合戦に独特の演出や縛りの影響を受けてしまい，BABYMETALが本来の魅力を存分に発揮できないのではないかという懸念である。

これはまっとうな懸念であり指摘であると思う。

時間的制約から，披露される曲は短くアレンジされることが半ば標準化しているのは事実だ。それどころか，多くの人が知るように「紅白特別メドレー」的なものになってしまう場合もある。いずれにしても曲のオリジナリティが大きく損なわれてしまい，その曲やアーティストの魅力が最大限発揮されなくなってしまうことになる。個人的には曲とアーティストへの敬意を欠いた，きわめて失礼な演出だと思う。

また，NHKの番宣の色合いが強い珍妙な掛け合いにアーティストが加担させられることもある。これは「歌」本来とはまったく無関係の余計な演出であり，茶番以外の何ものでもないと思う。曲を短く編集してしまう一方で，そんな余計な演出に時間を費やすというのは本末転倒だ。

このように，紅白に出場したところでBABYMETALの本質的な魅力が十分伝わらない可能性があるわけだが，そのような負の要素を差し引いても多大なる恩恵に授かることができるのもまた事実である。老若男女を問わず多くの人が家族ぐるみで見る歌番組（視聴率40％弱！）に出演するということは，他の何ものにも代えがたい巨大なインパクトを有する広告宣伝活動にほかならないからだ。ふだん日本国内ではめったにメディアに登場しないBABYMETALにとって，これは認知度を一気に高める上で最良の手段であることは明白だ。

BABYMETALのコアなファン層は40代男性である。それ以外の層，とりわけ10～20代の若者や女性を取り込む上で，話題性抜群の紅白に出場することのメリットは計り知れない。BABYMETALの音楽を聞いたことがない人たちや，名前くらいしか知らない人たちにリーチするには，紅白は最良のコンテンツと言える。たとえ曲が削られても，あるいは茶番劇に巻き込まれたとしても，すべては広告宣伝活動の一環だと割り切ってしまえば，これほど美味しい話はない。しかも「紅白に出た」という事実は言ってみれば「水戸黄門の印籠」のようなもので，一度でも出場してしまえば，今後少なくとも日本国内では長きにわたってBABYMETALは「紅白に出場したアーティスト」として一定のステータスを保持することになる（箔がつく）。

そして何より，そのような欲にまみれたうがった見方とはまったく別次元で，SU-METALとMOAMETALの2人（そしてかつての戦友YUIMETALも）が紅白に出場することそのものを喜び，そして誇りに思うのなら，ファンとしては邪念を廃してシンプルに2人のパフォーマンスを応援するべきだろ思う。

最後の問題は，BABYMETALが一世一代の大舞台ではたしてどの曲を披露するかということだ。最新のMVは“BxMxC”だが，これはあまりにも異端すぎる。MTV Japanの「VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2020」で披露した“PA PA YA!!”になる気配が濃厚だが，常に予想の斜め上を行くのがBABYMETALだから安易な予想は厳禁だ。メタルとダンスという要素をアピールするという点では“Shanti Shanti Shanti”がベストだと個人的には思うが，メタラーとしては“Arkadia”を披露してほしいという思いもある。いずれにしても大晦日はテレビの前で正座である。