ライブ参戦レポ/「BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE - CLEAR NIGHT」呪縛から解き放たれた夜

■総論

2日目のCLEAR NIGHTのBABYMETALは,前日とはまるで異なる感じだった。憑き物が取れたというか,呪縛から解き放たれたかのように伸び伸びとした雰囲気に満ちていて,ステージの上で歌い踊る3人は心の底から自由を謳歌しているようだった。

新曲を5曲も披露するというチャレンジングな夜だった1日目のBLACK NIGHTは,やはりどこか固さがあったのかもしれないと今では思う。演者側もそうだし,とりわけ観客側がそうだった。双方がにらみ合っているような,妙な緊張感が会場内には充満していた。それは足枷あるいはしがらみのようなものと言ってよかったかもしれないが,そのような重たい空気から完全に解放されたのが,2日目のCLEAR NIGHTだったのではないか。


■完全なるキングダム

オープニングは“METAL KINGDOM”。1月の幕張公演の時のように1つの玉座が空いてしまっていることはなく,SU-METAL,MOAMETAL,MOMOMETALの3人がそろって玉座に座している光景は実に壮観だった。幕張でこの曲を披露した際にSU-METALは着座しながら「これがキングダムか」と思ったそうだが,3人がそろい踏みしたこの日の“METAL KINGDOM”を目撃した私は「これが“METAL KINGDOM”の完全版か」と感激していた。

■新コスチューム

METAL KINGDOM”で3人が動き始めると,前夜とはコスチュームが変わっていることにすぐに気づいた。黒を基調としたデザインは変わらず,しかし光沢のある部分の輝きがゴールド成分多めになっていて,光の加減でキラキラと七色に変化するというゴージャスさ。遠目にも見栄えは抜群だった(まるで玉虫のよう)。

■“いいね!”にびっくり

長らく封印されていた“いいね!”が披露されたのは,間違いなくこの日のハイライトの1つだったはず。この曲が日本国内のライブで日の目を見たのは,いったいいつ以来だろう。あまりに久しぶりすぎて,曲が始まってから数秒間,いま今目の前でプレイされている曲が何なのか,にわかには分からなかったくらいである。それが“いいね!”であると分かった瞬間,腰を抜かしそうになってしまった。

我に返ってさらに驚いたのは,この曲を今年26歳になる女性が歌っても違和感がほとんどないという事実である。“METAL KINGDOM”と“いいね!”を同居させてしまうBABYMETALの振り幅の大きさ,懐の深さには脱帽だ。ちなみに“いいね!”に違和感がなかったのは,西の神によるヘヴィな味付けのおかげかもしれない。

しかし,なぜこのタイミングで“いいね!”なのか理由がさっぱり分からない。YUIMETALを欠いてから封印されていた曲をこれからはどんどん演るよという決意表明なのだろうか。だとすればCMIYCの復活もあり得るだろうか。ここは密かに期待したいところである。

■西の神

西の神による“Monochrome”も衝撃的だった。冒頭部分の尋常ならざるヘヴィネスは圧巻のひと言。特に雷鳴のように轟くドラムは驚異的と言うよりほかなく,その硬質感と重量感はとんでもないレベルだった。全体的にCDやMVとは曲の印象がまるで異なっていて,ダークでシリアスな側面がさらに強められていたと思う。

Divine Attack - 神撃 -”も1月に幕張で観た時とは印象が違った。東の神によるそれは切れ味鋭い疾走感がカッコよかったが,西の神版はタメがあって重厚感が増している感じがした。どちらが良いとか悪いとかいうことではなく,どちらもそれぞれの個性が出ていて良かったと思う。あとは好みの問題だ。

■“BABYMETAL DEATH”の衝撃

この日一番盛り上がったのは,間違いなく“BABYMETAL DEATH”が披露された時だろう。“いいね!”も久しぶりだったが,BMDも相当ご無沙汰だ。「MOMOMETAL DEATH!」の度に沸き起こる「うぉぉぉぉl!」と地鳴りのような大歓声が,この瞬間のオーディエンスの心情を如実に物語っていたと思う。

それにしても”BABYMETAL DEATH”がもたらす壮大なカタルシスは筆舌に尽くしがたい。しかも西の神による演奏で禍々しさと凶暴さが倍増するというおまけ付き。同じ曲なのに,以前とは別物のような感じがした。

■間髪入れずIDZ

まさかのBMDが終わり,場内に響き渡るギターのフィード・バック音を聴きながら気持ちを整理しようとしたのだが,途切れることなくそのままIDZになだれ込む怒涛の展開に再び腰を抜かした。

紙芝居なしで始まるIDZは初めてなのではないだろうか。もはやBMDがIDZのイントロのようだったが,強烈に畳みかけてくるこの展開は実に爽快だった。リミッターを完全に振り切っているのに,さらに出力を上げてくるBABYMETAL。その無尽蔵のパワーに圧倒された瞬間だった。

■MOMOMETAL降臨

今までは(当たり前だが)どこか控えめで,サポート役に徹している感が強かったMOMOMETALだが,さすがにこの日はそんなことを微塵も感じさせない全力パフォーマンスだった。何より弾けんばかりの笑顔と何度も歌を口ずさむ様子が強く印象に残った。

はたしてMOMOMETALはこれからどのような色を出していくのだろう。そしてMOMOMETALが個性を発揮することで,SU-METALとMOAMETALはどのような影響を受けるのだろう。MOMOMETALという存在がこれからのBABYMETALにどのような変化をもたらすのか,非常に楽しみだ。

■セット・リスト

CLEAR NIGHTのセット・リストは神がかっていたと改めて思う。“THE ONE”〜“BABYMETAL DEATH”〜“イジメ、ダメ、ゼッタイ”と続いたラスト3曲のコンボは特に強烈だった。生まれ変わったBABYMETALにとっての“THE ONE“,MOMOMETALが降臨した上でのBMD,6年ぶりに正式なトリオで演じられるIDZ――この一連の流れには,あまりにも深く,そして濃い物語がある。

【セット・リスト】
BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE - CLEAR NIGHT
2023年4月2日 at ぴあアリーナMM
01 METAL KINGDOM
02 Road of Resistance
03 いいね!
04 PA PA YA!!
05 Mirror Mirror
06 Light and Darkness
07 KARATE
08 Monochrome
09 METALIZM
10 Distortion
11 Divine Attack - 神撃 -
12 THE ONE
13 BABYMETAL DEATH
14 イジメ、ダメ、ゼッタイ





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