レビュー/BABYMETALの新曲“from me to u (feat. Poppy)”は“Distortion”の進化版?
from me to u (feat. Poppy) / BABYMETAL
2025年4月4日 配信開始
BABYMETALが新曲“from me to u”をリリースした。6月に発売される新アルバム「METAL FORTH」収録曲で,アメリカの歌手Poppyをフィーチャーしている(MVも同時公開)。レーベルはBABYMETALが新たに契約を結んだCapitol Recordsである(!)。
◯サウンド
いわゆる日本の「カワイイ文化」の影響を受けているPoppyをフィーチャーしているだけのことはあり,曲調はハイパー・ポップでダンサンブル。エレクトロ・メタルとでも呼んだらいいのだろうか。最近のBABYMETALらしい,あらゆる音楽要素のミクスチャーを象徴する楽曲である。このキラキラ感とヘヴィでブルータルなサウンドは“いいね!”に通じるものがあり,また“Distortion”がリリースされた際にも感じた初期BLOOD STAIN CHILDっぽさもあると思う。
要所要所でゲスト・ヴォーカリストがスクリーム(シャウト)をかますという構成も“Distortion”(アルバム収録バージョン)に似ているが,クリーンとスクリームのあわせ技という路線は,つい先日リリースされたBloodywoodの新曲“Bekhauf”と同じである(この曲ではBABYMETALがフィーチャーされている)。BABYMETAL自身のトレンドがこの路線なのかもしれない。
この曲が珍しいのは,SU-METALの歌声にかすかにエフェクトがかけられている点だろう。楽曲のエレクトロニックな側面を強調するためなのかもしれないが,いつものSU-METALらしい強靭で伸びやかなロングトーンは影を潜めており,どこかヴォーカロイドっぽい人工的な味つけがなされた歌声になっている。「そういうのもありだよね」と受け止める他ないが,個人的にはSU-METALの良さがあまり感じられずちょっと残念ではある。
◯ビジュアル
MVの前半3分の2ほどは「近未来トーキョー」をイメージさせるビジュアルで,アゲアゲな曲の雰囲気にとてもマッチしていると思う(BABYMETALの公式サイトには「Neo Tokyoをイメージして作られた」とある)。後半3分の1はビジュアルがガラッと変わる。巨大なモンスター(Poppyがドラゴンに変貌したとか)が出てくる荒廃した世界観や,赤色を基調としたディストピア的な描写は(これまた)“Distortion”に酷似している。
全体を通してBABYMETALの3人のダンスはいつになくスピーディーかつ派手な印象だ。もしかしたらこの曲ではダンスが他の楽曲以上に重視されているのかもしれない。演出も含め,ライブではどのようにパフォーマンスされるのかが楽しみだ。
◯歌詞
“from me to u”という曲名は何となくポジティブでエモーショナルなイメージを与えるが,歌詞をよく読むとこの曲は実にダークなものであることがわかる。たとえば……
With this rage inside of me
君に届け
=====
Maybe now
we can kill the enemy
=====
Is it a sin if I wish for destruction?
=====
闇を抜け
光と共に
終わりを告げた時
僕はただ
絶望を彷徨うのさ
=====
これらのフレーズが与えるイメージはMVの後半3分の1のディストピア的世界にマッチしており,歌詞の意味合いもまた“Distortion”に似ていると言えるのではないか。前半の「近未来トーキョー」のイメージとは相容れない歌詞世界である。
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