レビュー／10年間の集大成！「10 BABYMETAL BUDOKAN - THE ONE COMPLETE EDITION -」はセット・リストの“可変部分”にこそ魅力あり！

- 10/17/2021 08:21:00 午後

10 BABYMETAL BUDOKAN - THE ONE COMPLETE EDITION / BABYMETAL
2021年9月発売

2021年1月～4月にかけて日本武道館で行われたBABYMETALのライブ「10 BABYMETAL BUDOKAN」全10公演をほぼ完全収録した映像作品。10本のライブで披露された5種類のセット・リストすべてを楽しめる内容で，Blu-ray5枚，ライブCD10枚，104ページの写真集付きという豪華な仕様だ。

1.開封の儀

パッケージを手にしてまず驚いたのが，その重量感。おそらく3kgはあるのではないだろうか。形状のインパクトでは「LIVE AT BUDOKAN "BUDO-CAN" - THE ONE LIMITED BOX」には及ばないが，今までにリリースされたBABYMETALの全マテリアルの中で最も重たいことはほぼ確実。

では，さっそく商品を見てみよう。

外箱のダンボール。にはいつものようにジャケットがプリントされている。

化粧箱。正面から見ると何の変哲もないが……。

立ててみるとその厚みにびっくりする。余裕で自立する。

Blu-rayとライブCDは，同一セット・リストの2公演ごとに1冊のアルバムに収められている。104ページの写真集もあるので，これで重たくならないわけがない。

アルバムを開くと，見開き左側のページは全面写真になっている。この写真はアルバムごとに異なるこだわりの仕様だ。

2.内容について

私が参戦したのは2月20日の「DOOMSDAY -VI」と4月15日の「DOOMSDAY-X」。全13曲のセット・リスト中，日程ごとに異なる可変部分で私が見ることができたのは“紅月-アカツキ-”と“おねだり大作戦”，そして“NO RAIN, NO RAINBOW”と“GJ!”の4曲だ。残念ながら見ることが叶わなかったのは“Oh! MAJINAI”と“Starlight"，“シンコペーション”，“From Dusk Till Dawn"，“BxMxC”に“Brand New Day”の6曲である。今回のレビューでは主にこの「ライブで体験できなかった曲」を中心に感想を書きたいと思う。

まず“シンコペーション”。曲の冒頭をはじめ要所要所で炸裂する激しいフラッシュが凄まじい。全体的に豪華でありながらも上品な光の演出が多いBABYMETALのライブにあって，ここまで強烈で激しいのは珍しいのではないか。疾走する曲調と相まって，とてもかっこよかったと思う。

“Oh! MAJINAI”では頻繁にアイコンタクトする3人の姿が印象に残った。SU-METALもMOAMETALも，そしてサポートを務める岡崎百々子さんも，終始満面の笑み。自分自身が心の底からパフォーマンスを楽しんでいることがよくわかる。コサックダンスを含め終始飛び跳ねてステップを踏み続ける振り付けは体力的に相当ハードであるはずなのに，そのようなことを微塵も混じさせない姿には頭が下がるばかりである。

ライブで大化けした“BxMxC”は初披露された2020年1月の幕張公演から数段の進化を遂げていた。コロナ禍で彼女たちが得意とする「ライブで曲を磨いていく」ことができなかったはずなのに，この曲の独特の扇動感や重量感をステージ上の3人は全身を使って見事に表現していたと思う。強烈なサウンドもさることながら，音に合わせてカッコよく決めまくる3人のアクションに目が釘付けだ。特に，腰を折り曲げて深いヘドバンをかますSU-METALとMOAMETALのクールなアクションは必見。

そして本邦初公開となった“From Dusk Till Dawn”。まずセット・リストが良かった。エモーショナルな“KARATE”からの流れが絶品。パッションが外に向けて開放される“KARATE”に対して，内に秘められた熱き情熱がほとばしるFDTDというコントラスト。共通項は情熱（パッション）であり，エモーションだ。幻想的な光の演出と相まって，〈壮大な宇宙にほとばしるエナジー〉のようなものを感じた。暗闇を切り裂く刃の如きSU-METALのヴォーカルも絶品。どこまでも力強く伸びやかで，まるで宇宙空間全域に向けて放たれた女神の歌声のようだ。後半のシンガロングパートは全力で歌いたくなる。当日会場にいたファンは声を出せずに悶絶したのではないだろうか。

その他の曲で印象的だったものをいくつか挙げる。

まず，オープニングの“IN THE NAME OF”と“BABYMETAL DEATH - Shin ver. -”。初お披露目となった後者の衝撃が絶大だったが，どちらもシアトリカルで凶々しくドラマティックな雰囲気が最高だった。細部まで作り込まれた独特の世界観がゴージャスに表現されていて，こうして映像作品として見るとその完成度の高さがよくわかる。

個人的に「大好きな曲ベスト3」に入る“紅月-アカツキ-”は会場で実際に目の辺りにしたけれど，歌いまわしの緩急自在のアレンジが素晴らしいと改めて感じた。魂の奥深くまで感情が注入されたSU-METALの絶唱っぷりがとにかく圧倒的だった。

そのSU-METAL。表情の豊かさは今までのライブで随一だったのではないか。歌い方だけでなく，目つきだったり視線だったりアクションだったり，とにかく全身が芳醇な感情表現の塊といった印象。ときおりプーッと頬をふくらませる姿も可愛らしかった。気持ちが入りすぎていたのか，“PA PA YA!!”では巻き舌が過去最強レベルだったと思う。

最後に写真集について触れておきたい。ふだん私はこの種のおまけの写真集にはあまり興味がないのだが，今回の写真集は素晴らしいクオリティだと思う。そもそも税込66,000円という高額商品を清水の舞台から飛び降りるつもりで購入したのは，日本国内のライブで初披露された“From Dusk Till Dawn"をどうしても見たかったから。もちろん10公演全てのセット・リストを楽しみたかったということもあるが，写真集については正直なところあってもなくてもどちらでもよかったのだ。しかし，そんな私でもこの写真集の美しさには惚れ惚れとしてしまった。“光の祭典”と表現してもいいくらいライティングの演出が秀逸だった10公演の特徴をどのカットもしっかり捉えており，素晴らしいアート作品に仕上がっていると思う。

【収録曲】

【DOOMSDAY - I & Ⅱ 2021.1.19 & 20 at NIPPON BUDOKAN】

01. IN THE NAME OF

02. Distortion (feat. Alissa White-Gluz)

03. PA PA YA!! (feat. F.HERO)

04. ギミチョコ！！

05. ド・キ・ド・キ☆モーニング

06. Oh! MAJINAI (feat. Joakim Brodén)

07. メギツネ

08. KARATE

09. Starlight

10. ヘドバンギャー！！